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   『ドリトル先生の郵便局』 ドリトル先生物語全集3

小B6判 『ドリトル先生の郵便局』 この画像はリンクしていません

菊判(21.8×15.2cm)・小B6判(17.2×12cm)
(イギリス)
ヒュー・ロフティング 作・さし絵
井伏 鱒二(ますじ) 訳
岩波書店
菊判 ¥1,890(¥1,800+税5%)
小B6判 岩波少年文庫 ¥798(¥760+税5%)    


「ドリトル先生物語全集」の第三作

「ドリトル先生物語」の3冊目。物語の内容から考えた年代順では、5番目に当たります。1923年(大正12年)発表。


『ドリトル先生の郵便局』のあらすじ(冒頭部分のみ)

ドリトル先生は、家族として一緒に暮らしている動物たちと共に、冬休みに西アフリカへ出かけて、楽しい日々を過ごします。

イギリスを目指して帰りの船旅に出て一週間目に、「韋駄天(いだてん)のスキマー」というツバメから、1キロほど先に、ひとりきりで丸木舟に乗っている黒人女性がいると聞きます。

小さな舟で沖に出ているのは危険なので、ドリトル先生はスキマーの案内を頼りに、その丸木舟の元へ急ぎます。

丸木舟に近寄って、その黒人女性に話を聞くと、夫が奴隷船に連れ去られたということでした。

そこでドリトル先生は、その奴隷船を追いかけることにします。

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この巻にはトミー少年は登場しない

この『ドリトル先生の郵便局』は、トミー少年が登場する以前の時代に戻ります。『ドリトル先生航海記』でトミーに親しみを感じていた読者には、ちょっとさびしいかも知れません。

でも、トミー少年は『ドリトル先生の動物園』や「月」3部作シリーズ、『ドリトル先生と秘密の湖』などで、活躍しますから、心配は要りません。トミーに会いたい人は、そちらを先にお読みください。

タイトルの「郵便局」だけではないストーリー

さて、この巻は『ドリトル先生の郵便局』というタイトルなので、「ドリトル先生が郵便局に係わるんだろう。先生は動物語が話せるから、たぶん動物たち絡みだな。」とたいていの人が思うでしょう。

それは当たっているのですが、それだけではありません。この巻で、ドリトル先生は郵便局を経営しつつ、もうひとつ公共性の高い事業を立ち上げます。

この事業も、動物たちの協力を得て続けられますが、人間たちは少なからず恩恵を受け、アフリカの王国ファンティポの人たちとドリトル先生の交流が深まります。

ファンティポの国自体も、産業が発達してゆくことになります。

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事業のかたわら、動物たちのための活動

そして、その二つの事業のかたわら、ドリトル先生は、世界中の動物たちの福祉や慰安(?)のためにも尽くすことになります。

ドリトル先生の一生は、「人助け」と「動物助け」に費やされるのですが、「ドリトル一家」ともいうべき、先生と共に住む動物たちももちろん協力します。

巻の中に動物たちの語るお話が

この巻は、四部で構成されています。その第三部では、ドリトル一家の動物たちが個人(?)的にそれぞれが「お話」を物語ります。

そのひとつひとつのお話が、ユニークで楽しい短編になっています。

ドリトル先生の郵便局(ともうひとつの事業)が、この巻の大きなストーリーだとすると、動物たちの語るお話は、それに花を添えるサイドストーリーと言えます。

この巻は長編なのに、その中に短編集が挿入されていて、短いお話も楽しめるということです。

第四部は推理小説的プラス冒険小説的な章

そして第四部は、ちょっとした推理小説的な趣きがあります。なかなか緊迫するシーンもあります。その後半には、冒険小説っぽい展開もあります。

確証はないのですが、作者ロフティングは推理小説が好きだったのではないかと、館長は想像しています。このドリトル先生のシリーズには、たびたび、推理小説のようなエピソードが登場するからです。

それに、ロフティングの育った時代は、「シャーロック・ホームズ」の物語に人気があったはずです。

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知らず知らずにイギリスの歴史について覚えてしまう

それから、この物語を読んでゆくと、知らず知らずのうちに、イギリスの歴史や風物の勉強になります。

冒頭では、廃止されたばかりの奴隷制度のことや、始まったばかりの郵便制度が描かれるし、午後4時のティータイムの習慣も出てきます。物語中では、日曜日のティータイムには、キュウリのサンドイッチが供されることになっています。

そもそも「サンドイッチ」はイギリスのサンドイッチ伯爵が、トランプを中止せずに食事ができるように考案したものだ、ということなども、この物語を読んでいると、頭をよぎります。

こういう物語を楽しんで読んでいると、自然とイギリスという国に親しみを感じてきます。

ビクトリア朝の負の価値観は説明を

ただやはり、どんなものにも光と影があるということか、ちょっと気になるのが、スズメのチープサイドの言葉を通して表現される、植民地主義に影響された考え方です。(ドリトル先生自身は、全く偏見のない人物です。)

この物語の設定は、ビクトリア時代ですから、その頃の一般的イギリス人の考えをチープサイドが象徴しているように思えます。

この点については、『「ドリトル先生物語全集」と作者について』のページでも、述べています。くどいようですが、子どもに読ませる場合は、保護者がこの点の説明をしてあげて欲しいと思います。

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実在の有名人も登場します

この巻では、有名人の名前も出てきます。コロンブスと、そしてもうひとり。日本ではあまり知られていませんが、動物たちの「お話」に登場する画家は、実在の人物です。

南條竹則さんの著書『ドリトル先生の英国』(文春新書)によりますと、この画家は、18世紀の終わり頃から19世紀の初めにかけて活躍し、有名だったそうです。その名は、本を読む時のお楽しみです。

作者のさし絵も楽しめます

それから、作者の手になるさし絵ですが、だんだん慣れてきて、線がなめらかになって来ているように思います。コロンブスや、灯台の内部などが印象に残るし、動物たちの絵はとてもかわいらしい感じです。

郵便局の守衛を務める犬のジップが「終了」(“CLOSED”)の札をドアに掛ける絵など、見ていると思わず、微笑んでしまいます。

ロフティングは優れたイラストレーターです。ストーリーと一緒にさし絵も楽しんでください。

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『ドリトル先生不思議な旅』は、『ドリトル先生アフリカゆき』『ドリトル先生航海記』『ドリトル先生のサーカス』『ドリトル先生月へゆく』などのストーリーを交えたもので、1967年(昭和42年)の映画です。

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「ドリトル先生物語全集」の出版社
      岩波書店児童書編集部

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      国書刊行会

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      文芸春秋

この物語の舞台であるイギリスの政府公認日本語公式サイト
      UK NOWサイト
   (イギリスに関するさまざまな情報を網羅)


このページの情報は、岩波書店の目録、あとがきの「訳者のことば」、文春新書の『ドリトル先生の英国』(南條竹則 著)などによります。


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