菊判(21.8×15.2cm)・小B6判(17.2×12cm)
(イギリス)
ヒュー・ロフティング 作・さし絵
井伏 鱒二(ますじ) 訳
岩波書店
菊判 ¥1,890(¥1,800+税5%)
小B6判 岩波少年文庫 ¥840(¥800+税5%)
「ドリトル先生物語全集」の第四作
「ドリトル先生物語」の4冊目。物語の内容から考えた年代順では、2番目に当たります。1924年(大正13年)発表。
『ドリトル先生のサーカス』のあらすじ(冒頭部分のみ)
アフリカへの旅から帰ってきたドリトル先生と、家族である動物たちは、イギリスの小さな町パドルビーに戻ります。久しぶりの我が家でみんな揃って夕食後のだんらんを楽しもうとしています。
しかし、アフリカへ行く時、船乗りから借りた船を壊してしまったので、お金で返さなくてはなりません。
ドリトル先生はどこかのサーカス団に入れてもらってお金を稼ごうと思いますが、どうやってそのサーカス団を見つけたら良いのか、わかりません。
そこへ、「ドリトル先生が帰ってきたような気がした」と言って、ネコ肉屋のマシュー・マグが訪れます。マシューは、先生と動物たちにおみやげを持ってきてくれました。
そして、サーカス団についても、心当たりがあると言います。
ドリトル先生は翌日、マシューと連れ立ってそのサーカスを訪れます。
サーカスと冒険の巻
この巻は、借金返済のためのサーカス興行のお話です。しかし、『ドリトル先生の郵便局』が「郵便局」だけの物語ではなく、個々の動物たちのミニ・ストーリーを加えていたように、この『ドリトル先生のサーカス』も「サーカス」だけのお話ではありません。
物語の前半には、「ドリトル先生の冒険」とサブタイトルを付けたい部分があります。もちろん、側面から動物たちの支援を受けるのですが、おおむねドリトル先生ひとりがドリトル先生らしい理由で、サーカスからある動物を連れた160kmの逃避行に出るのです。
この逃避行が「ハラハラドキドキ」と「この先どうなる」の連続で、とても楽しめます。
作者ロフティングの手になるさし絵も、臨場感(?)を高めてくれています。
動物語が話せるというのは便利なもので、この旅の途中でドリトル先生は、動物たちに苦境を助けてもらうことになります。
「紳士」を象徴して身なりに気を使うドリトル先生
ドリトル先生は、階級にとらわれずに人間を見る人ですが、やはり紳士階級の出身のせいか、この大変な逃避行の最中でも身なりには気を使っています。
ヴィクトリア朝当時の紳士階級を象徴しているようで、見方によっては、かなりユーモラスです。
もちろん動物助けも
そしてこの旅で動物たちに助けてもらったドリトル先生は、帰りに本来の先生の役目に立ち戻って、ある動物を助ける仕事もします。
この動物の狩りは、長い伝統があってイギリスの上流階級の人々が行ってきたものです。
しかし現在では、動物愛護やいろいろな事情が絡み、ごく最近この動物の狩りの禁止法が成立したそうです。(実質的な効果は、疑問視されているようです。)
マシュー・マグ大活躍
この巻の後半は、本題の「サーカス譚(たん)」です。
冒頭でこのサーカス団のことを教えてくれたネコ肉屋のマシュー・マグは、夫人のテオドシアと共にサーカスに参加して、大活躍をします。彼には、こういう興行の仕事が向いているようです。
サーカスのメンバーもユニークな人たちばかりです。気持ちよく一緒に仕事を進めることができる人物ももちろんいますが、正直なドリトル先生とは早晩、ぶつかることになる人物も多いのです。
しかし、動物語を話せるドリトル先生こそ、動物のためのサーカスを興行できる人物であることは、間違いありません。
紆余曲折はありますが、ドリトル先生は楽しい演目を実現させます。
馬も活躍
もともと、この「ドリトル先生」の物語を書くきっかけになった「馬」についても、この巻で長年の労働に対して報いるため、脚光を浴びるシーンもあります。作者ロフティングの「馬」に対する思い入れを感じます。
他の動物たちにも楽しい演目が
「馬」意外の楽しい興行については、この巻では、ページ数がそれほど多くはないのですが、後の『ドリトル先生のキャラバン』の巻で、詳しく述べられています。
ブタのガブガブも個性を発揮
しかし、この巻の記述でも、楽しさは十分伝わってきます。特に、食いしん坊で目立ちたがりのブタのガブガブの個性が、だんだん強く表現されるようになってきているので、ユーモラスな彩りがより多く添えられています。
原型は「ハーレクイン劇」
この演目の原型は、南條竹則さんの『ドリトル先生の英国』によると、「ハーレクイン劇」という無言劇なのだそうです。
この「ハーレクイン劇」は、もともとイタリアの喜劇「コメディア・デラルテ」の影響を受けたもので、「コメディア・デラルテ」では、「パンタルーン」は「老人」、「コロンバイン」は「小間使い」、「ハーレクイン」は「召使」というように、人物設定が決まっているそうです。
この巻の文中にも、「コロンバイン」「パンタルーン」などという言葉が出てきます。
また、この巻から加わる犬のトビーは、「ポンチ人形の芝居」をしていました。この「ポンチ人形の芝居」についても、この『ドリトル先生の英国』で説明があります。
こちらは、人形を使って街角で興行する、庶民的なお芝居だそうです。
さし絵は絶好調
作者の手になるさし絵は、この巻ですっかり線が落ち着いたように見えます。ドリトル先生はころっと丸っこく、動物たちの絵もすっきりしていて、それでいてかわいらしく、「ドリトル先生物語」を象徴するようなさし絵がたくさんあります。
年代順にはちょっと矛盾が
また、このページの冒頭で、この巻は「物語の内容から考えた年代順では2番目」としていますが、これは、この巻の冒頭の記述からと、手元にある『ドリトル先生アフリカゆき』のあとがきに依るものです。
この巻は、冒頭の記述のみを取ると、一回目のアフリカ行きから帰った直後と思えるのですが、この巻の中ほどには、『ドリトル先生の郵便局』の内容が出てくるので、矛盾しています。
(実は、冒頭の部分にも時間的に見て矛盾した記述があります。)
作者がわざとそうして、時間をあいまいにしていたのかも知れませんが、現在では確かめようがありません。
ただ、この全集は、「月3部作」のほかは、どの巻も独立して読める作りなので、あまり、こだわらなくても良いと思っています。
「年代順は参考までに」ということで、館長の考えた順を記載しています。
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『ドリトル先生不思議な旅』は、『ドリトル先生アフリカゆき』『ドリトル先生航海記』『ドリトル先生のサーカス』『ドリトル先生月へゆく』などのストーリーを交えたもので、1967年(昭和42年)の映画です。
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