おとなも楽しめる児童図書、中学生から読める一般書を紹介する読書案内サイト こども図書館ドットコム

こども図書館ドットコム>外国の児童文学1>『ドリトル先生月へゆく』・外国の児童文学2

外国の児童文学のフロア外国の児童文学1            出版社の年令指定管理人の年令指定小学3、4年から

   『ドリトル先生月へゆく』 ドリトル先生物語全集8

小B6判 『ドリトル先生月へゆく』 この画像はリンクしていません

菊判(21.8×15.2cm)・小B6判(17.2×12cm)
(イギリス)
ヒュー・ロフティング 作・さし絵
井伏 鱒二(ますじ) 訳
岩波書店
菊判 ¥1,680(¥1,600+税5%)
小B6判 岩波少年文庫 ¥714(¥680+税5%)    


「ドリトル先生物語全集」の第八作

「ドリトル先生物語」の8冊目。物語の内容から考えた年代順では10番目です。1928年(昭和3年)発表。


『ドリトル先生月へゆく』のあらすじ(冒頭部分のみ)

ドリトル先生の一行は、月からの使いであるジャマロ・バンブルリリイと共に月に着陸しました。月の山はどれも、てっぺんが切り取られた、まるですりばちの底のような異様な形をしていました。

辺りの景色は見慣れなくて気味が悪いし、空気や引力も地球とは異なります。ドリトル先生の注意に従って、一行は慎重に月世界の探検に踏み出しました。

まず、着陸する時にドリトル先生が見つけた一本の木を探すことにして、三時間ほども歩き続けましたが、見つかりません。

ドリトル先生は、この未知の世界では全員が一緒にいることを望み、オウムのポリネシアにも、一行から見える程度の高さで舞い上がって、空から偵察するように指示します。

その偵察の結果、木のある場所がわかって、一行は進みますが、月世界の木は地球の木とはかなり異なるものでした。

近くで見たその木は、とても大きいばかりでなく、何かのいきものような形をしていて、気味の悪い印象を与えるのものでした。サルのチーチーはすっかりおびえてしまい、一行は沈んだ気持ちで月での第一夜を過ごす用意にとりかかりました。

このページのトップへ


「月」三部作の二作目に当たる物語

この『ドリトル先生月へゆく』は、『ドリトル先生と月からの使い』『ドリトル先生月から帰る』と合わせて「月」三部作を成しています。

二作目に当たる『ドリトル先生月へゆく』では、いよいよドリトル先生一行が、未知の世界「月」に降り立ちます。

但し、『ドリトル先生と月からの使い』の説明ページにも書きましたが、この三部作が書かれたのは、昭和の初期。今から80年ほども前のことです。

現在では常識となっている現実の「月」の姿と、この物語の中の「月」の姿は、大きく異なります。小学生の読者がこの辺りを混同しないように、保護者から、ひとこと説明が必要かと思われます。

その点を踏まえさえすれば、「月」三部作の「本文」に当たるこの『ドリトル先生月へゆく』は、いつもの「ドリトル先生の世界」と、上質の「子ども向けSF」のコラボレーションとして楽しめる物語です。

おとなの読者が楽しむには、現実の「月」に関する知識をいったん取り去って、ドリトル先生一行が、未知の星に降り立ったと仮定したほうが、自然に物語に入り込めるかもしれません。

このページのトップへ

どこへ行っても、変わらないドリトル先生

この物語の冒頭から、ドリトル先生の一行が感じた「月」世界の不気味な雰囲気は印象深く、その荒涼とした世界の描写には、いつものドリトル先生シリーズの楽しさとは相容れないものを感じます。

しかし、ドリトル先生は、どこへ行っても、ドリトル先生。科学者らしく冷静に、そしてリーダーとして一行の安全に配慮しつつも、いつもの好奇心旺盛な先生の本領を発揮して行動します。

そんなドリトル先生の普段と変わらない態度に、トミー少年たち一行もいつのまにか月世界の不気味な印象は薄れて、未知の世界の探検を楽しむことになります。

ストーリー展開には、少々ミステリーっぽい仕掛けがあり、後半へ興味をつないで行きます。

このページのトップへ

豊かな想像力で描くユートピア

作者ロフティングは、この月世界に、異世界にふさわしい、地球とは異なる気候や風土を設定しましたが、動植物も独自の視点から作り上げました。

このような月世界の描写に、館長は作者の想像力の豊かさを強く感じました。しかし、作者は想像力の豊かさで物語を紡きあげただけではなく、「平和」についての主張も盛り込んでいます。

第一次世界大戦に従軍して、戦争を体験した作者は、この「月」世界を借りて、自らの望む平和な理想郷、ユートピアの姿を語っています。

この物語が書かれてから80年後の現在も、作者の望んだ「平和」は実現していませんので、おとなの読者は、彼の主張に頷けるものを感じることでしょう。

作者自ら描くさし絵が理解を助ける

作者ロフティングは、一作目の『ドリトル先生アフリカゆき』から、ずっとさし絵を自ら描いてきました。その温かみのあるさし絵は、すでに文章と一体化されて、「ドリトル先生シリーズ」のイメージを、読者に強く印象づけていると思います。

その、作者自ら描くさし絵が、この巻で特に、物語の理解を助けています。

何しろ、月世界の動植物は、作者の想像力が作り上げた、とてもユニークなものたちです。

他の画家の手を借りることなく、それらを作者が描くということで、イメージがよりダイレクトに伝わります。

他の巻にも増して、作者自らさし絵を描くことの利点が強く感じられます。

不思議な雰囲気の舞台と、いつものドリトル先生の冒険譚を、このさし絵を助けに楽しみつつ、想像の世界を思い切り堪能できる巻です。

このページのトップへ

このページのトップへ


『ドリトル先生月へゆく』関連のオンライン書店のページ

菊判 (ハードカバーで堅牢な作り、大体A5判と同じ位のサイズ)

      ドリトル先生月へゆく (ドリトル先生物語全集 (8)(アマゾン)

      ドリトル先生月へゆく icon(セブンアンドワイ)

小B6判 岩波少年文庫 (ソフトカバーで、新書判位のサイズ)

      ドリトル先生月へゆく (岩波少年文庫―ドリトル先生物語)
                                   (アマゾン)

      ドリトル先生月へゆく icon(セブンアンドワイ)

A5判 番外編(国書刊行会)

      ガブガブの本―『ドリトル先生』番外篇(アマゾン)

      ガブガブの本 『ドリトル先生』番外篇 icon(セブンアンドワイ)

「ドリトル先生物語全集」関連の書籍

      ドリトル先生の英国 文春新書 (アマゾン)

      ドリトル先生の英国 icon 文春新書 (セブンアンドワイ)

映画『ドリトル先生不思議な旅』のビデオ

      ドリトル先生不思議な旅(アマゾン)

      ドリトル先生 不思議な旅 【日本語吹替版】(アマゾン)

『ドリトル先生不思議な旅』は、『ドリトル先生アフリカゆき』『ドリトル先生航海記』『ドリトル先生のサーカス』『ドリトル先生月へゆく』などのストーリーを交えたもので、1967年(昭和42年)の映画です。

このページのトップへ


『ドリトル先生月へゆく』関連のホームページ

「ドリトル先生物語全集」の出版社
      岩波書店児童書編集部

「ドリトル先生物語全集」の番外編 『ガブガブの本』の出版社
      国書刊行会

「ドリトル先生物語全集」関連の書籍 『ドリトル先生の英国』の出版社
      文芸春秋

この物語の舞台であるイギリスの政府公認日本語公式サイト
      UK NOWサイト
   (イギリスに関するさまざまな情報を網羅)


このページの情報は、岩波書店の目録、あとがきの「訳者のことば」、文春新書の『ドリトル先生の英国』(南條竹則 著)などによります。


クレジット こども図書館ドットコム