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   『ハロウィーンの魔法』

『ハロウィーンの魔法』 この画像はリンクしていません

22×16cm
(イギリス)
ルーマー・ゴッデン 作
堀川 理万子(りまこ) 絵
渡辺 南都子(なつこ) 訳
偕成社
¥1,260(¥1,200+税5%)
(但し、2008年2月現在、新刊は品切れ)


『ハロウィーンの魔法』のあらすじ(冒頭部分のみ)

マフェットとセリーナのラッセル姉妹は、スコットランドの谷間にあるミヌーク村の近くに住んでいます。スコットランドでは秋が深まってくると、ある日突然、草や背の低い木の上に、たくさんの小さなクモの巣が、張りめぐらされます。

セリーナはこれを、「妖術使い」のクモの仕業だと思っていました。

そして、十月が終わりに近づくと、農家には一番大きなカブの注文が来て、郵便局には恐ろしいお面が並び、家々ではお菓子作りが始まります。

スコットランドの子供たちが楽しみにしている、ハロウィーンの準備です。

ハロウィーンの夜、子どもたちは仮装していろいろな家を訪問し、歌か詩かなぞなぞを一つ披露して、お返しに「あまいもの」をもらえることになっています。

姉のマフェットは、コウモリの仮装をすると言いました。

妹のセリーナは、「いい魔女」になると宣言します。

いつも「なにをやってもへまばかり」しているセリーナが、「いい魔女」の仮装をしようと思ったのには、深いわけがありました。

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少女と老人の交流を描いた物語

『ハロウィーンの魔法』は、スコットランドの谷あいの村を舞台に、8才の少女セリーナと、農場主のマックじいさんの交流を描いた物語です。

作者ルーマー・ゴッデンは、先にこのサイトで紹介した『台所のマリアさま』で、周囲の人たちに理解されにくい内向的な少年を描きました。

この『ハロウィーンの魔法』の主人公セリーナもまた、内向的ではないものの、『なにをやってもへまばかり』とか、『のろまでぶきっちょ』、『だめな子』などという否定的な言葉で評価されることが多い子として描かれています。

セリーナの愛馬、ポニーのハギスも、見かけは冴えないし、飼い主の言うことを聞かない、困った『だめな』ポニーと思われています。

そして、セリーナの友だちのティムは、学校でセリーナよりももっと「だめな子」と思われています。

このセリーナ、ポニーのハギス、ティムに、偏屈なせいで村人たちに嫌われているマックじいさんがかかわりあうことになり、ハローウィンの行事が絡んで、ストーリーが展開します。

(なかなかインパクトのある、カラフルな表紙の絵に描かれているのは、この四者です。それにプラスして、マックじいさんの愛犬レディが、小さく顔を出しています。)

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「だめな子」たちの善意が悪意をしのぐ

物語は、作者ゴッデンらしく、子ども向けの文学としては、結構シリアスな事件がいくつか起こります。

「だめな子」と思われているセリーナの勇気や、苦境にある人や動物への思いやり、そして幼いながらも筋を通した信念などが、これらの事件を通して描かれます。

ティムも、恵まれない境遇にありながら、素直さや他人を思いやる気持ちを持っています。

このセリーナとティムの善意が、ハロウィーンの夜に、ある悪意とぶつかり合い、物語は一気に大団円へと導かれてゆきます。

のどかな村の物語ながら、ドラマチックなところがあり、本のタイトルにある「魔法」とは、この大団円のことを指しています。「ハリー・ポッター」シリーズで描かれているような、いわゆる「魔法」は登場しません。

この世には悪意と善意が存在しますが、この物語では善意が悪意をしのいで、読後感が爽やかです。

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平易な文章で性格や感情、情景を伝える名人芸

そしてこの『ハロウィーンの魔法』では、作者の平易で簡潔な文章が、登場人物の性格や感情や、その場の情景などを的確に伝える力に驚かされます。

やはりこのサイトで先に紹介したゴッデンの『人形の家』では、子どものおもちゃである人形の世界を借りて、人生を表現する力に驚かされました。

この物語では、10才ぐらいの子どもでも無理なく読めるような平易な文章が、登場人物の性格や感情を、読者の心にまっすぐに届けます。

ゴッデンの筆にかかると、登場人物たちは作り物ではなく、実在の人物のように感じられます。「ああ、こういう人いるいる・・・。」とリアルに思えて、読み始めてすぐ、感情移入できます。

まるで文字に命が吹き込まれて、文字自体が生き生きと語りだすかのようです。名人芸です。

舞台となっている村の自然の描写も、短い文章でその美しさを伝えてくれます。幼い読者にも、背景や場面が理解しやすい文章です。

館長は、作者の名人芸を堪能しつつ、頭の中に自分だけの映画を上映して、楽しみながらこの物語を読みました。

特にクライマックスでは、闇夜にランタンの灯りを受けてきらっと光ったあるものの描写があり、その場の息を呑む情景が、映画のワンシーンのようにくっきりと、頭に浮かびました。

また、ゴッデンの文章には、シリアスな場面なのに作者が「まじめな顔で冗談を言っている」ような文章もあり、この辺りは、作者のユーモア感覚が楽しめます。

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ユーモラスなさし絵

シリアスな事件の場面では、あまりにリアルなさし絵だと、読んでいて気持ちが暗くなるかもしれませんが、この本には、ユーモラスで明るい印象のさし絵が添えられています。

表紙はカラフルですが、本文中のさし絵は黒一色のペン画で、事件の描写さえもかわいらしい雰囲気のイラストで描かれて、子どもに親しみやすいと思います。

各章の章題の上にも小さなかわいいイラストがあり、この物語を楽しく読ませてくれます。ゴッデンの簡潔な文章と共に、このさし絵も印象に残ります。

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ハロウィーンについて

この物語で重要なモチーフである「ハロウィーン」は、日本でもよく知られるようになってきた、キリスト教の伝統行事です。

この本の訳者である渡辺南都子(なつこ)さんの「訳者あとがき」には、『古代ケルト人の新年、十一月一日の前夜にやってくるという死者の霊をむかえるお祭り』とあります。

死者の霊がやってくると考えられているところは、日本のお盆と似ています。

このサイトの「文学以外の児童書」で紹介した『ドクター・ケビンの里山ニッポン発見記』によると、ハロウィーンは、最初はケルトの人々のお祭りであったものが、その後、キリスト教の布教のために、キリスト教の行事に取り入れられたということです。

「あらすじ」で述べたように、現在では、このハロウィーンの夜には、子どもたちが仮装して家々を回り、お菓子をもらって楽しむことになっています。

また、ネットの百科事典「ウィキペディア」によると、かぼちゃで怖い顔を作ってちょうちんにして戸口に置くのは、悪い霊を追い払うためだそうです。これは、日本の魔よけと同じ考え方です。

この『ハロウィーンの魔法』の舞台、スコットランドでは、かぼちゃではなくて、カブを使っています。

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原題は、「マックじいさんのハロウィーン」

この物語の邦題は『ハロウィーンの魔法』ですが、英語の原題は、“Mr McFadden’s Hallowe’en”で、直訳すると「マックファデン氏のハロウィーン」。

文中では「マックじいさん」と呼ばれているので、さしずめ「マックじいさんのハロウィーン」というところでしょう。

この物語は、セリーナ側からの記述が圧倒的に多く、最初読者はセリーナに感情移入して読むと思います。

それで充分おもしろい物語ですが、館長は原題を見て、マックじいさんの視点から一連の出来事を見ると、また違った印象を持って楽しめることに気付きました。

誰ともろくに付き合いをせずに一人で暮らしていた老人が、思いがけずに訪れた珍客との交流によって、心の中にあったものが引き出されてゆきます。

セリーナやティムとはまた、別な意味で「だめな」人とされていたマックじいさんにとっても、「幸福」が用意されていて、作者の人間を見る目の優しさを感じます。

マックじいさんの人生に思いを馳せつつこの物語を読むと、感動は、大人の方がより大きいかも知れません。

もちろん、人間味あふれるセリーナの性格がこの物語の大きな魅力で、館長はセリーナがとても好きです。

ただ、作者がタイトルを「セリーナのハロウィーン」ではなく、「マックじいさんのハロウィーン」とした点にも着目して読んでいただければ、この物語をもっと楽しめると思います。

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作者ルーマー・ゴッデンについて

作者のルーマー・ゴッデンは、1907年(明治40年)イギリス生まれ。作家。インドで育ち、その後イギリスとインドの両方の国で半々に暮らし、作品も両方の国に取材して書いているということです。インドで一時、バレエ学校を経営したこともあります。

1998年(平成10年)に死去しています。

『人形の家』(岩波書店)、『台所のマリアさま』(評論社)、『ねずみ女房』(福音館書店)、『ラヴジョイの庭』(偕成社)、『すももの夏』(徳間書店)など、多数の作品があります。

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絵の堀川理万子(りまこ)さんについて

絵の堀川理万子さんは、1965年(昭和40年)東京生まれ。東京芸術大学美術学部卒業後、同大学院終了。画家。さし絵や絵本の他に、毎年タブロー(一枚画)の個展を開催しています。

さし絵や絵本の作品は、『シロクマたちのダンス』(佑学社・偕成社)、『ふつうのおひめさま』(徳間書店)、『メアリーの鳩』(偕成社)など多数。


訳者は渡辺南都子(なつこ)さん

訳者の渡辺南都子さんは、東京生まれ。東京学芸大学卒業。出版社に勤務後、翻訳業。

訳書は、『リトルベアー』(講談社)、『バレエダンサー』『トゥシューズ』(偕成社)など多数。共訳書に「大草原の小さな家」シリーズ(講談社)があります。

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偕成社より出版、年令指定は小学中学年から

『ハロウィーンの魔法』は、偕成社から出版されています。但し、2008年2月現在、新刊は品切れ状態です。古書店や図書館で探してみてください。(アマゾンのマーケットプレイスで古書が入手できます。)

出版社の年令指定は「小学中学年から」です。活字は大きめで、漢字は少なく、ルビがたくさん振られています。

ですから、本を読み慣れていれば、小3からでも読めると思いますが、数少ない漢字の単語の中に、少しむずかしいものもありますので、館長の年令指定は、小4からとしました。

なお、この本では作者の名前が「ルーマ」と表記されていますが、このサイトで先に紹介した『人形の家』(岩波書店)や『台所のマリアさま』(評論社)では、「ルーマー」と表記されていましたので統一して、このページでも「ルーマー」としています。

また、この物語が偕成社から刊行されたのは、1997年(平成9年)ですが、英語版の発表は1975年(昭和50年)です。

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『ハロウィーンの魔法』のオンライン書店のページ

22×16cm (ハードカバー)

      ハロウィーンの魔法(アマゾン)


『ハロウィーンの魔法』関連のホームページ

『ハロウィーンの魔法』の出版社
      偕成社

『ハロウィーンの魔法』の表紙とさし絵の画家堀川理万子さんの公式サイト
      堀川理万子の仕事

『ハロウィーンの魔法』に登場するハロウィーンについて
      ハロウィン
      (フリー百科事典のウィキペディアのページ)

『ハロウィーンの魔法』の舞台であるイギリスの政府公認日本語公式サイト
      UK NOWサイト
      (イギリスに関するさまざまな情報を網羅)


なお、トップページに記載しているように、このサイト内に掲載している表紙画像は、すべて各出版社より、掲載の許可をいただいています。このページの表紙画像も、偕成社より許可をいただいています。

このページの情報は、偕成社の目録、あとがきの「訳者のことば」などによります。


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