菊判(21.8×15.2cm)・小B6判(17.2×12cm)
(イギリス)
ケネス・グレーアム 作
E・H・シェパード さし絵
石井 桃子 訳
岩波書店
菊判 ¥2,100(本体価格¥2,000+税5%)
小B6判 岩波少年文庫 ¥798(本体価格¥760+税5%)
『たのしい川べ』のあらすじ(冒頭部分のみ)
物語は、春、モグラが自分の家のそうじに取りかかっているところから始まります。熱心にそうじをしていたモグラですが、春の気配に誘われて、外へ飛び出します。
全身で春を楽しむモグラは、歩いているうちに川岸へ出て、生れて初めて見た川に、惹きつけられます。川岸に住んでいる川ネズミと知り合い、意気投合した二人(二匹?)は、豪華なお弁当を持ってボートに乗り、ピクニックに出かけます。
主人公は「モグラ」と「川ネズミ」
この物語は、モグラと川ネズミのほかに、カワウソやアナグマ、ヒキガエルなどが登場して、それぞれが絡む、楽しいエピソードが展開されます。
副題が「ヒキガエルの冒険」となっているので、ヒキガエルが主人公かと思う方もいるかもしれませんが、あとがきの「訳者のことば」にあるように、主人公はモグラと川ネズミのように思われます。
いくつかのストーリーをまとめて1冊の本にしたもの
この本は、12章から成っていますが、ひとつのストーリーが終盤に向かって突き進む、という形ではなく、いくつかのストーリーをまとめて1冊の本にした、という構成です。
もともと、この物語は作者のグレーアムが4才の息子のために即興で作ったお話を、後年、本に再構成してまとめたものなので、このような形になったのかも知れません。
副題に名前があるように、ヒキガエルには強い個性が与えられていて、(作者の息子アラステアの性格に似ていたとか)他の朴訥な動物たちとの対比がとてもおもしろく、本の後半ではヒキガエルの巻き起こす騒動に「ハラハラ」したり、「クスクス」笑ったり、楽しめます。
美しい田園風景の描写や日常生活の穏やかな楽しみが綴られる
そして、この物語には、美しい自然の描写がたくさんあります。イギリスの児童文学には、ストーリーの中に自然の美しさを謳った文章を、巧みに織り込んだものが多いのですが、この物語も例外ではありません。
作者のグレーアムが自然の美しさに魅了されていたことが、文章から感じられます。それぞれの季節ごとの美しい田園風景や、家を中心とした穏やかな日常生活での楽しみが、ストーリーと一体になって綴られます。
その自然描写と共に、じっくりと描かれているモグラや川ネズミたちの心の動きも、味わって読んでいただきたいところです。
この物語は、いたずらに先を急がずに、「ゆっくり、楽しんで」読むことをお勧めします。
作者ケネス・グレーアムについて
作者のケネス・グレーアムは1859年(安政6年。江戸時代末期)、スコットランドのエディンバラに生まれ、1932年(昭和7年)に死去しました。
子ども時代は、家庭に恵まれず、母はグレーアムが5歳の時に死去し、母方の祖母に育てられました。学業成績優秀でありながら、家庭の事情で大学には進めませんでした。
しかし、ロンドンに出て働くようになったことから、言語学者のファーニヴォル博士や、文学者・文化人であるテニスン、ブラウニング、ラスキン、ウィリアム・モリスといったそうそうたる人たちと知り合い、友人になりました。
その後、17才で銀行員となり、その勤めのかたわら、詩や随筆を書くようになりました。
息子の4才の誕生日に語られたものが、この物語の原型
1890年(明治23年)頃から子どもの心理を描いた随筆を発表し、好評を得ました。
40才を過ぎてから結婚し、息子アラステアの4才の誕生日に、「モグラとキリンとネズミ」の出てくるお話を、という注文に答えて語られたものが、この「たのしい川べ」の原型です。(この即興のお話は、3年間も続いたということです。)
当時のアメリカ大統領も、家族ぐるみでこの物語のファン
物語としてまとめられて出版されたのは、1908年(明治41年)で、出版された当初の批評家の受けはよくありませんでしたが、どんどん増刷を続けるほど、読者に受け入れられました。
当時のアメリカ合衆国大統領だったルーズベルトも、家族ぐるみでこの本を気に入って、アメリカでも出版するようにと書店を説得したということです。おとなも子どもも楽しめる物語だということが、このエピソードからもうかがえます。
さし絵画家E・H・シェパードについて
初版発行時から、いろいろな画家がさし絵をつけましたが、1931年(昭和6年)のE・H・シェパードの絵が「ぴったり」と評価を得ているようです。
E・H・シェパードは、年老いたグレーアムの家を訪ねて、辺りを取材し、グレーアムがその出来栄えに喜んだ、というさし絵を描きました。「物語にぴったり」と、館長も思います。
描かれた動物たちに対する愛情が感じられる、楽しい絵です。本の表紙裏には、動物達の住む田園の地図が描かれ、物語の中のエピソードの理解を助けてくれます。
岩波書店からふたつの判で出版
『たのしい川べ』は、岩波書店から出版されています。菊判(ハードカバー)は、¥2,100(本体価格¥2,000+税5%)、岩波少年文庫(小B6判)は¥798(本体価格¥760+税5%)です。
出版社の年令指定は小学4,5年から
岩波書店の2005年(平成17年)度の目録による年令指定は、「小学4、5年から」ですが、本の奥付には「小学3、4年以上」と記載されています。このページの冒頭の年令指定は、目録によるものです。
ひらがなが結構多く、少しむずかしい漢字にはルビがありますので、「小学3年」でも読めると思いますが、文章の量が多いので、目録の指定のように「小学4年」あたりからが、妥当なところと思います。
もちろん、子どもの心を忘れていないおとなにもお勧めです。
『たのしい川べ』のオンライン書店のページ
菊判 (ハードカバーで堅牢な作り)
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『たのしい川べ』関連のホームページ
『たのしい川べ』の出版社
岩波書店児童書編集部
この物語の舞台であるイギリスの政府公認日本語公式サイト
UK NOWサイト
(イギリスに関するさまざまな情報を網羅)
このページの情報は、岩波書店の目録、あとがきの「訳者のことば」などによります。