22cm
(イギリス)
J・K・ローリング 作
ダン・シュレシンジャー 表紙画・イラスト
松岡 佑子 訳
静山社
22cm(上下巻2冊セット) ¥3,990
(本体価格¥3,800+税5%)
「ハリー・ポッター」シリーズ4冊目
シリーズの4冊目。本国イギリスでの初版発行は、2000年(平成12年)。日本での初版発行は、2002年(平成14年)です。
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のあらすじ(冒頭部分のみ)
リトル・ハングルトン村の「リドルの館」では、50年前にリドル一家が不審な死を遂げていました。リドル家の庭番のフランク・ブライスが殺人犯ではないかと疑われましたが、リドル一家の死因が特定されなかったため「殺人」と断定できず、釈放されました。
それ以来、屋敷の持ち主が変わっても、フランクは「リドルの館」の敷地内にある小屋に住み、ずっと庭番としての仕事を続けてきました。
ある夜、老いたフランクは「リドルの館」に灯りがちらついているのを目撃し、何年か振りで、館に足を踏み入れます。そして、ある部屋のドアの影で正体不明の二人の男の声を聞きます。
その声は、フランクには意味のよくわからない会話をかわします。かろうじて、「冷たい声」の持ち主が誰か女を殺したこと、そして「ハリー・ポッター」という子どもが狙われていることを、フランクは知ります。
フランクは警察に知らせたいと思いましたが、背後から現れた巨大な蛇が「冷たい声」の持ち主にフランクの存在を知らせたため、殺されます。
そして、その一部始終を夢で見ていた少年、ハリー・ポッターがそこから300キロ離れた場所で目を覚まします。
この巻で魔法界の「恐怖」が実体化
この第4巻から、2006年(平成18年)8月現在、出版されている第6巻『ハリー・ポッターと謎のプリンス』まで、上下巻の2冊でひとつの物語となります。この巻に限らず、分厚い2冊の本を見た瞬間は、「長い物語」という感想を持つかも知れませんが、読み始めると、分厚さは気にならなくなって、物語に引き込まれます。
この第4巻では、1巻目から魔法界の人々の潜在的な恐怖の「対象」となっていたものが、遂に実体化します。主人公ハリーの、宿命付けられた対決に彼がどう立ち向かうかが最大の見どころです。
「魔法」の術だけではなく、14才になったハリーの精神的成長も特筆すべきものがあります。
特に冒頭部分の熟読を
シリーズ全体でも分岐点となる巻であり、悲劇的要素もありますが、「あらすじ」で紹介した冒頭部分の続きには、サッカーのワールドカップを連想させる魔法界の空中サッカー「クィディッチ・ワールドカップ」の楽しい記述があります。
ハリーの親友、ロンやハーマイオニー、ロン一家との楽しい交流の様子も描かれます。
しかし、「クィディッチ・ワールドカップ」大会の場面の後半には、後のストーリー展開に深くかかわる出来事が凝縮されて述べられます。下巻を読み終わった読者は、「なるほど、あれがこうつながるのか」と緻密な構成に脱帽することになります。
いつもに増して、特に注意深くこの巻の冒頭部分を読んで出来事を記憶することで、この巻の読了後の感動が増すと思います。
ホームグラウンド以外の「外の世界」が
前巻までは、ハリーの育った場所や「ホグワーツ魔法魔術学校」など、このシリーズの読者には馴染み深い世界で展開されました。しかし、この巻では、それ以外の「外の世界」の存在が、登場します。
「外の世界」の地域性も楽しく、この「外の世界」と「ホグワーツ」との絡みで、新しい魔法界のアイテムや個性的な人物たちが登場します。
「屋敷しもべ」は「エルフ」
そして2作目の『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で登場した屋敷しもべのドビーも再登場して物語を盛り上げます。
この屋敷しもべは、『ハリー・ポッターの魔法世界ガイド』(早川書房)によれば、「エルフ」または「ハウス・エルフ」。「エルフ」と言えば、映画『ロード・オブ・ザ・リング』を見た人ならば、「とんがり耳」の美男美女の種族を連想するでしょう。
特に、俳優オーランド・ブルームが演じた「旅の仲間」である美形のエルフ、レゴラスの印象が強い人は、「『ハリー・ポッターと秘密の部屋』のドビーもエルフ?」と驚くかも知れません。
前述の『ハリー・ポッターの魔法世界ガイド』によれば、「エルフ」はいろいろな国の民話に登場するので、国によってかなりイメージが異なるそうです。
たとえば、ドイツのエルフは醜く、デンマークのエルフは美形、イギリスのエルフは男性なら老人、女性は美しい乙女とか。一口に「エルフ」といっても国によってさまざまで、そのため、作家の作り出す「エルフ像」も多種多様といったところでしょう。
「エルフ」ではなく「ホッブ、ホッブゴブリン」説も
また、『妖精Who’s Who』(ちくま文庫)の「エルフ」の項には、ドビーのような家事をしてくれる妖精についての記述はありません。
この本では、家事をしてくれて、衣服などをもらうと家を出てゆく妖精は、「ホッブ、ホッブゴブリン」の項に登場します。性質からすると、ドビーはこちらに近そうです。
明らかになってゆく登場人物たちの過去
14才になったハリーたちは、大人への入り口にさしかかり、魔法界の脅威とは別に、心理的にも複雑な時期を迎えることになります。前作までとは、はっきり違うところです。
わき役の人物たちも、今までは伏せられていたその生い立ちや、背負わされている運命が描かれます。その人物たちに感情移入できれば、それぞれの人生にドラマがあり、そのひとりひとりの集合体が社会であると、年少の読者にも感じ取れるかも知れません。
風雲急を告げる展開に込められた作者のメッセージ
もちろん魔法を駆使してのおもしろい、楽しめる記述がありますが、この巻では「風雲急を告げる」展開が待っています。推理小説の謎解きのような楽しみも味わえます。
そのストーリー展開を物語として楽しむ一方で、窮地に陥った時の決断や勇気、人としての優しさなど、主人公ハリーを通して描かれる作者のメッセージを感じます。
シリーズの分岐点となる、物語が大きく展開する巻です。
原作を読んでから映画を
この『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の映画(マイク・ニューウェル監督)は、前作の『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』とは監督が違います。前作(アルフォンソ・キュアロン監督)のダークな雰囲気は薄れて、映画全体のイメージは、1・2作目(クリス・コロンバス監督)に近くなりました。
ただ、上下巻2冊分を1本の映画にしたので、かなりの省略を余儀なくされています。他の巻の3作の映画に比べても省略が多いので、原作を読んでいない人には、わかりにくい展開のところがあるように感じます。
この『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は、まず原作を読んでから映画を見た方が、楽しめると思います。
魔法の場面の特撮シーンなどは、おもしろくてとても見ごたえがあります。この辺りは、映画ならではの楽しみです。また、このシリーズには珍しい、華やかなシーンの映像化は、ファンには嬉しいところです。
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のオンライン書店のページ
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英語版
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「ハリー・ポッター」シリーズ関連のホームページ
「ハリー・ポッター」シリーズの出版社
静山社
「ハリー・ポッター」に関する情報サイト
ポッターマニア
(特に映画の情報は詳細かつ膨大な量)
この物語の舞台であるイギリスの政府公認日本語公式サイト
UK NOWサイト
(イギリスに関するさまざまな情報を網羅)
このページの情報は、静山社のホームページ、「ハリー・ポッター」シリーズのあとがき、『ハリー・ポッター裏話』(静山社)、『ハリー・ポッターの魔法世界ガイド』(早川書房)などによります。