おとなも楽しめる児童図書、中学生から読める一般書を紹介する読書案内サイト こども図書館ドットコム

こども図書館ドットコム>ファンタジー1>『ハリー・ポッターと死の秘宝』・ファンタジー2

ファンタジーのフロアファンタジー1             管理人の年令指定小学5,6年から

「ハリー・ポッター」シリーズ
   『ハリー・ポッターと死の秘宝』

『ハリー・ポッターと死の秘宝(上)』 22cmの版の画像 この画像はリンクしていません

22cm
(イギリス)
J・K・ローリング 作
ダン・シュレシンジャー 表紙画・イラスト
松岡 佑子 訳
静山社
22cm(上下巻2冊セット) ¥3,990
(本体価格¥3,800+税5%)


ハリー・ポッター」シリーズ7冊目

シリーズの7冊目。本国イギリスでの初版発行は、2007年(平成19年)。日本での初版発行は、2008年(平成20年)7月です。


『ハリー・ポッターと死の秘宝』のあらすじ(冒頭部分のみ)

月明かりの道に二人の男が現れ、一瞬、互いに杖を向け合いました。しかし相手がわかると杖をしまって、同じ方向に歩き出しました。

男たちは、セブルス・スネイプとヤックスリー。どちらも「情報」を抱えて、ルシウス・マルフォイの館に向かっていました。

生垣には孔雀が歩いて、噴水が音を立て、一階の窓に明かりがともっていました。

客間では、暖炉の火だけが部屋を照らし、沈黙している大勢の人間がいましたが、スネイプとヤックスリーの注意を惹いたのは、テーブルの上に逆さになって浮かんでいる人間でした。

テーブルの奥から二人の男を呼ぶ声がしました。

暖炉を背にして座っていた声の主には髪はなく、縦線のような赤い瞳で、蛇のような、鼻孔が切り込まれた顔でした。

このページのトップへ


最も読み応えのあるシリーズ最終巻

ファン待望のシリーズ7冊目『ハリー・ポッターと死の秘宝』の日本語版が、2008年(平成20年)、7月23日に発売されました。

シリーズの最終巻でもある、この『ハリー・ポッターと死の秘宝』は、4冊目の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』から6冊目の『ハリー・ポッターと謎のプリンス』までと同じように、上下巻の2冊立てです。

しかし、この最終巻では、前巻までに提示されていた謎がすべて解き明かされて大団円に至るので、他の2冊立ての巻よりも、さらに読み応えのある、最も「濃い」内容の物語となっています。

また、悲劇的要素がある中で、読者にとっては、心温まる「聖地巡礼」を思わせる箇所もあります。

もちろん、とてもドラマチックなストーリー展開で、館長は、すべてのページを読み終わった後の感動を、最初の読了時には、言葉でどう表現したら良いのかわかりませんでした。

1冊目の『ハリー・ポッターと賢者の石』出版から、10年間ほどの長い年月をかけて、ハリーと泣き笑いを共にしてきた読者の期待に、最終巻で、作者はしっかり答えてくれています。

このページのトップへ

出版前からすでに構想は完璧だった

ネットでこの最終巻の感想を拾ってみると、「論理に破綻がなくて、すばらしい」というものが多く見られます。

館長も同感ですが、それもそのはずで、「ハリー・ポッター」シリーズと作者についてのページでも述べたように、このシリーズの構想を練るために、作者は5年間という時間をかけています。

出版のあてもない中で、天啓のようにひらめいたアイデアを物語に仕立てるために、「5年間」もの時間をかけることができるというのは、すごいことです。

そしてシングルマザーとなり、一児を抱えて生活保護を受けながら1冊目の『ハリー・ポッターと賢者の石』をコーヒー店で執筆しましたが、この1冊目の出版前に、すでに最終巻の最終章を書き終えていました。

ですから、最初の映画や本がヒットしたから続きを作る、というような、よくあるパターンではなく、作者の頭の中では、1冊目の出版時に、すでに最終巻までのストーリーが出来上がっていました。破綻がないのは当然と思います。

このページのトップへ

上巻でも新たな謎が

館長は、前巻までで、謎が提示されつくしたという印象を持っていましたが、作者はそう簡単には、謎解きに入りません。上巻でも、ハリーにとって重要な事柄で、新たな疑惑が持ち上がります。

そして魔法界は「脅威」の勢力が増し、あたかも第二次世界大戦当時のドイツのような、暗雲立ち込める社会情勢になっています。

そのような情勢の中で、疑惑に心を悩ませつつも、命の危機にさらされているハリーと、親友のロン、ハーマイオニーの行動を軸に、上巻のストーリーが展開します。

上巻の冒頭では、下巻での激しい攻防を予感させるような出来事や、「これで本当に終わりの巻なんだ」と感じられる、前巻までとは一味違う『ハリー・ポッターのご親戚の方』の描写もあります。

下巻の展開の速さ、意外さと比べると、上巻のテンポはゆっくりめに感じられるかも知れませんが、シリーズの他の巻同様、上巻の記述が下巻で大きな意味を持ってきます。作者の仕掛けを堪能できるよう、上巻を少しゆっくり、丁寧に読まれることをお勧めします。

このページのトップへ

「マグル」への政策は、現実の写し絵

それにしても、「脅威」の「マグル(魔法族ではない、普通の人間)」への考え方は、とても恐ろしいものです。

世界史の、特に近・現代史に関心のある方であれば、すぐに連想すると思われるのが、先に述べた、第二次世界大戦時のナチス・ドイツがユダヤ人に対して取った政策です。

館長は、作者がこの史実を下敷きにして、「マグル」への迫害の様子を描いたのだろうと推測しています。

しかし、その史実を知らなくても、「暴力」で人々を押さえつけて、「出自」で人々を差別して迫害する社会の恐ろしさは、この「ハリー・ポッター」シリーズ(特に最終巻)を読めば、子どもでも理解できます。

このような体制の社会が、「物語」の中のことと思って読めるのは、とても幸福なことだと思いました。

ただ、数十年も前のことではなく、今、現在も、「物語」と形こそ多少違うものの、人権を抑圧された社会の中で生きざるを得ない人々が世界にはいる、ということも、重い事実として頭に浮かびました。

このページのトップへ

下巻では息をもつかせぬようなドラマチックな展開

多くの読者がたぶん予想していたと思いますが、下巻では、シリーズ中で最も激しく、最もドラマチックな攻防が繰り広げられます。

その戦いの激しさ、展開のドラマチックさに、ページをめくるのがこわいような、また、もどかしいような気持ちにさせられます。

下巻のストーリーは、シリーズを通しての最大の楽しみで、作者のストーリーテラーとしての才能を堪能できます。

鮮やかな印象の転換

下巻の、特に後半の展開は、とてもスリリングで、また、謎解きが行われるときに、大多数の読者が想像しえなかったと思われる「事実」が明かされます。

過酷な運命を背負わされて生まれてきたハリーの双肩には、魔法界のみならず、人間界の人々の命も、かかっています。しかし、そのハリーの存在は、実はこの隠されていた「事実」にも、大きく支えられていたものでした。

単なる勧善懲悪の物語には到底なしえない、より深い感動が、この「事実」によってもたらされることは、間違いありません。この「事実」により、6冊目までの読了で抱いていたある「イメージ」が、読者の中で、鮮やかに転換します。

人間の複雑さと、本当の勇気とはどのようなものかという作者のメッセージが、読者の心にダイレクトに飛び込んで来ます。人間の持つ愛情の強さと深さが、強く印象付けられます。

謎解きと共に、人間賛歌を歌い上げた作者の才能に脱帽です。

この「事実」を知ってからシリーズを読み返すと、文章のひとつひとつに、また新たな感慨を持って読むことができると思います。

このページのトップへ

「押し付けてはいけないけれど大切なこと」を描く

そして、ハリーの成長に伴うダンブルドア校長との関係を通して、「指導者の質の重要性」や「指導者との信頼関係の重要さ」も、感じられます。

人間である以上、皆、不完全な存在で、その不完全な者同士が、どう信じ合えば良いのかという命題にも、作者の答えが示されているように思います。

それから、「人間は何を信条として生きれば幸せになれるのか」や、「何が人間にとって最も大切なことなのか」、また、「どんな状況でも自分の信ずるところに従って勇気を持って行動することの大切さ」なども、この物語全体を通して、感動を持って読者の心に届くと思います。

館長個人としては、ハリーの心の優しさと、逃げてはいけないことから逃げない勇気に、心を打たれます。

これらを「愛と勇気と感動」という言葉で表現して宣伝すると、とても陳腐で、言葉だけが上滑りをして、人の心に届かない可能性があります。

また、言葉だけで道徳を押し付けることは、時にはとても危険なことです。

作者は、これらの「押し付けてはいけないけれど、とても大切なこと」を、魔法界という架空の世界を創り出して、楽しみながら読める物語に仕立てあげてくれました。

いろいろな物事を経て成長して行くハリーの姿は、世界中の子どもたちに、楽しみと共に、必ず心の糧となるものを残してくれることでしょう。

このシリーズは、多くの人が何度も繰り返して読み、世界中で読み継がれてゆくファンタジー文学の傑作であることは、間違いありません。小学5〜6年以上の、すべての人たちにお勧めします。

このページのトップへ

作中に登場する本が発売される

最終巻には、『吟遊詩人ビードルの物語』という本が登場します。この本は、作者が実際に手書きのイラストと文章で7冊作り、6冊は親しい友人などにプレゼントして、残りの1冊をアマゾンが約4億5千万円で落札したそうです。

この落札額は、作者が設立した、世界中の孤児のための慈善団体に寄付されました。

その手書きのイラストや、宝石などを使った装丁の一部を、2008年(平成20年)8月7日現在、アマゾンのサイトで見ることができます。このリンクから飛んだページの中に写真が掲載されています。

アマゾンでは、この本を複製して、10万冊限定のコレクターズ・エディションを発売し、収益を上記の孤児のための慈善団体に寄付するということです。価格は11,000円で、英語版です。発売予定日は、2008年12月4日で、2008年(平成20年)8月7日現在、予約受付中です。

また、コレクターズ・エディションとは別に、2008年12月に『吟遊詩人ビードルの物語』の英語版が、イギリスとアメリカで一般発売されるそうです。

これらについては、サイト「ポッター・マニア」でも詳しく紹介されていますので、興味のある方は、そちらをご覧下さい。

ぜひ、日本語版も発売して欲しいものです。

このページのトップへ

原作同様、映画も2本立て

先に述べたように、この最終巻はとても「濃い」内容の物語です。

読んでいる最中から、「これほどの内容を、どうやって1本の映画にするんだろう?」と老婆心ながら心配していましたが、映画製作者も3時間ほどの1本の映画では無理だと考えたらしく、この『ハリー・ポッターと死の秘宝』は、2本立てで制作されることが決まったそうです。

映画は、6冊目の『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の製作中で、2008年(平成20年)11月21日に、日本・アメリカ・イギリス同時上映の予定ということです。

映画についても、サイト「ポッター・マニア」で詳しく紹介されているので、そちらをご覧ください。但し、このサイトはネタばれがありますので、未読の方はご注意を。

このページのトップへ


『ハリー・ポッターと死の秘宝』のオンライン書店のページ

22cm (ハードカバーで堅牢な作り)

「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)(アマゾン)

ハリー・ポッターと死の秘宝 icon(セブンアンドワイ)


英語版(イギリス版)

Harry Potter and the Deathly Hallows (Harry Potter 7)(UK)(アマゾン)

英国新書版 ハリー・ポッターと死の秘宝 icon(セブンアンドワイ)

英語版(アメリカ版)

Harry Potter and the Deathly Hallows (Harry Potter 7)(US)(アマゾン)

英語版を読むときの手引書

 「ハリー・ポッター」Vol.7が英語で楽しく読める本(アマゾン)

 ハリー・ポッターvol.7が英語で楽しく読める本 icon(セブンアンドワイ)


「ハリー・ポッター」シリーズのDVDはこちら

「ハリー・ポッター」シリーズのビデオはこちら

「ハリー・ポッター」シリーズの関連本はこちら

このページのトップへ


「ハリー・ポッター」シリーズ関連のホームページ

「ハリー・ポッター」シリーズの出版社
      静山社

「ハリー・ポッター」に関する情報サイト
      ポッターマニア
    (特に映画の情報は詳細かつ膨大な量)

この物語の舞台であるイギリスの政府公認日本語公式サイト
      UK NOWサイト
  (イギリスに関するさまざまな情報を網羅)


このページの情報は、静山社のホームページ、「ハリー・ポッター」シリーズのあとがき、『ハリー・ポッター裏話』(静山社)、『ハリー・ポッターの魔法世界ガイド』(早川書房)などによります。


クレジット こども図書館ドットコム