19×13cm
(アメリカ)
ケビン・ショート 文・絵
森 洋子 訳
家の光協会
¥1,575(本体価格¥1,500+税5%)
アメリカ人ナチュラリストの眼から見た日本の里山と精神文化
日本の自然と文化のとりこになったアメリカ人ナチュラリストの、日本の里山と精神文化についての著作。一般書ですが、中学生から読めます。
「です」「ます」ではなく、「〜だ」「〜した」という文体が歯切れ良くリズミカルで、読みやすい本です。第一刷発行は、2003年(平成15年)5月です。
巻末にウォーキングを楽しむためのアドバイス
この本は6章から成り、巻末には、ウォーキングを楽しむための著者の体験を交えてのアドバイスがあります。
著者が驚いた日本の自然の豊かさと人々の暮らし
第1章は、アメリカでの子ども時代に親しんだ自然と、千葉の自然の共通性から考えたカントリーサイドの魅力や、ウォーキングの魅力について、第2章は、著者が驚いた日本の自然の豊かさや、人々の暮らしについて述べられています。
日本に農業や漁業で生計を立てる人はいないと思っているアメリカ人
著者の来日当時の1972年(昭和47年)から今日に至るまで、一般的なアメリカ人の抱く日本のイメージは「工業国」で、日本に農業や漁業などの第一次産業で生計を立てている人はいないと思っているそうです。(インターネットで調べて見たところ、これはアメリカに限らないようです。)
「工業国」だから、自然や野生動物は皆無、と思い込んでいるアメリカ人は多いようです。実際に来日した著者は、故郷で絶滅したクマが東京近郊に生息していることを知り、衝撃を受けました。
魅力的な日本の里山の描写
第3章は、魅力的な日本の里山が語られます。著者の考える「里山」は、薪炭林(しんたんりん)として、地域の人たちによって維持されてきた雑木林に、その付近一帯を含めるものです。
つまり、水田、用水路、溜め池、野菜畑、果樹園、神社やお寺・農家の庭先の花や木などが里山ということです。
この章で述べられる里山についての描写は、すばらしいものです。文章を読み進むうちに、農家の庭先や田んぼなどが眼前に浮かんでくるような気がします。歴史や信仰を絡めて、里山の風景や小動物、植物について詳しく述べられています。
日本の里山を楽しむ著者に教えられる
季節ごとに繰り広げられる自然のドラマを観察し、スケッチし、考察し、ウォーキングして楽しみ、いかに著者が里山に魅了されているかが、伝わって来ます。自国の自然について、日本人の方が教えられることも多々、あるように思います。
日本の土着信仰はアメリカ先住民族の信仰と共通点が
第4章は、日本のさまざまな地域の里山についてや、アメリカなどのカントリーサイドについて、第5章は、日本の里山と切り離せない、神社やお寺に象徴される、土着信仰について語られます。
先祖の霊や、土地や、動植物に対する畏敬の念は、遠い昔から日本人のDNAに伝わってきたように思いますが、このような価値観は「ランド・エシック」と呼ぶそうです。
日本のランド・エシックの基本は、人間が動植物に対して何か特別な権利があるのではなく、土地の恵みを分けてもらうことによって、生きることができるのだから、安易に殺してはならず、必要な分だけをいただく、という考えです。
それは、資源を枯渇させないことにつながります。
著者はその考えに共感を覚え、アメリカの先住民族の信仰に、それと共通するものがあると言います。しかし、このランド・エシックが、経済とテクノロジーの社会である日本に深く根付いていることにまたまた、驚いたそうです。
その他、キリスト教の行事と思われていたものと、ヨーロッパのランド・エシックの関係について、興味深い話が述べられています。
カントリーサイドの保護も
第6章は、原生自然でないため、無関心な国が多かった、カントリーサイドの保護について述べられます。
日本の自然について新たな角度から語られる
この本全体を通して、日本の里山のすばらしさや土着信仰が、アメリカ人である著者の目を通して、新たな角度から語られています。日本の自然について、認識を改めさせてくれる本です。
なお、章ごとに著者自身の手によるイラストや、1ページのコラムがあります。
著者について
著者は、1949年(昭和24年)、アメリカ・ニューヨーク生まれ。1972年(昭和47年)に初来日。以後、上智大学で日本語と日本史を学び、卒業後はアラスカ大学で文化人類学を専攻。
1982年(昭和57年)にスタンフォード大学博士課程に進学、1991年(平成3年)に同大学の文化人類学生態学専攻課程で博士号取得。
この間、来日を繰り返し、現在は千葉県在住で、東京情報大学環境情報学科教授。環境教育のコンサルタントとしてさまざまな活動をされています。
『ドクター・ケビンの里山ニッポン発見記』のオンライン書店のページ
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