新書判
(日本)
石川 文洋 著
岩波書店 岩波新書
¥735(本体価格¥700+税5%)
報道カメラマンの5ヶ月間にわたる日本縦断の記録
ベトナム戦争の取材経験がある報道カメラマンの、徒歩での5ヶ月間にわたる日本縦断の記録。岩波新書なので一般向けですが、学術的な難解な本ではないので、中学生から読めます。第一刷発行は、2004年(平成16年)5月です。
著者はベトナム戦争時、兵士と共に行軍
著者は、1938年(昭和13年)沖縄県生まれ。中学生の頃は新聞配達で町を歩き、ベトナム戦争時はアメリカ軍と南ベトナム軍に同行取材して兵士と共に歩き、その後はウォーキング、さらに中山道・木曽路の120キロの徒歩の旅をしました。
7月に宗谷岬をスタート、12月に那覇市にゴール
そして、2003年(平成15年)7月、65歳で以前からの夢だった、徒歩による日本縦断の旅を実現します。
北海道の宗谷岬を7月15日スタート、その後はおおむね日本海海沿いを進み、沖縄県の那覇市に12月10日にゴールです。(主な宿泊地と到達した日付け入りの日本地図が、巻頭にあります。
旅の記録の他に11編のミニ・エッセイ
序章でこの旅の動機が語られ、第一章から第四章までは、北海道から九州・沖縄までのそれぞれの旅の記録が語られます。終章では、旅が省みられます。また、それぞれの章の途中に、11編のミニ・エッセイがあります。
序章で旅の動機が語られる
序章での、旅の動機や旅行費や旅支度などが、比較的短めのセンテンスで読みやすい文章で語られ、「どんな旅になるのだろう」と期待が高まります。
旅の記録は歴史や政治、社会についてのエッセイの趣きが
第一章からの旅の記述は単なる記録ではなく、旅先で出会った人々との交流から感じた、歴史や政治や社会について著者の視点から語られる、エッセイの感があります。
文章には押し付けがましいところはなく、抑制が効いていて、現在の日本のさまざまな姿が浮かび上がります。
もちろん紀行文の部分も
紀行文として、旅館の応対や食べものについても述べられ、それぞれの土地で出会った人々の写真も添えられ、一緒に旅をしているような気分で読み進められます。
また、徒歩での縦断ということで、日本の道路が基本的に自動車を中心として作られているということなどの問題点も、この本から感じます。
徒歩の旅をする人へ参考になるミニ・エッセイ
ミニ・エッセイには、全国の徒歩での旅に適した道路が表としてまとめてあり、写真も掲載されています。逆に徒歩での旅には危険な道路も、写真付きで載っています。
せっかく歩道があっても、草が生い茂ってとても歩ける状態ではなく、仕方なく危険な思いをしながら車道を歩かなければならなかったり、狭いトンネル内で追い越しをする車に驚いたりなどは、実際に歩いた人でなければわからない事実です。
同じくミニ・エッセイでは、徒歩の旅での靴について述べたものがあり、これから徒歩の旅に出ようという人には参考になる情報です。道路のゴミや、この旅の前後の著者の健康についての興味深いエッセイもあります。
その他、著者が沖縄県出身なので、旅先で沖縄県出身者との出会いも多く、沖縄についての話も拡がります。
日本社会について考えさせてくれる旅行記
2003年の日本を描き出した旅行記であると共に、日本社会について、考えさせてくれる本です。中学生、高校生にも読んで欲しいと思った1冊です。
この旅の間に書き終えた本以外にも多くの著作が
また著者には、この徒歩旅行の前に執筆を始め、旅行中に歩きつつ書き終えたという『戦争はなぜ起こるのか 石川文洋のアフガニスタン』(冬青社)や、『死んだらいけない Open your eyes』(日本経済新聞社)、『石川文洋のカメラマン人生 貧乏と夢編』(エイ出版社・エイ文庫)などの多くの著作があります。