新書判
(日本)
椎名 誠 著
岩波書店 岩波ジュニア新書
¥777(本体価格¥740+税5%)
行動派作家、椎名誠さんのジュニア向けの著作
世界の辺境を旅する行動派作家、椎名誠さんのジュニア向けの著作。「岩波ジュニア新書」なので中学生以上が対象ですが、おとなも楽しめます。2005年(平成17年)6月、第一刷発行です。
著者の子ども時代のエピソードと、世界中への旅
第12章まであり、第1章から第3章までは著者の子ども時代から30代半ばまでのいろいろなエピソード(子ども時代が主)、第4章以降は、会社を辞めてフリーになってからの世界中への旅について、語られています。
全くこの著者の本を読んだことのない人も、著者の育った場所や経歴がわかり、訪れた世界中の場所についても、コンパクトに述べられているので、「椎名誠入門」という趣きもあります。
巻末に著者の旅の本と本文中に挙げられた本のリスト
巻末には、著者ご自身の旅の本のリストと、著者の推薦する本(文中に挙げられた本)のリストが載っていて、出版社名が明記されています。
本文中に挙げられた本に興味を持った人には、その本が探しやすいし、第4章以降の著者が訪れた場所に興味を持った人には、もっと詳しくまとめられた著者の本を探しやすくなっています。親切な作りです。
読み易くてストレートに心情が伝わる文章
この著者の文章は、とても読み易く、かつ心情がストレートに伝わって来ます。第1章から第3章まで語られる著者の子ども時代のエピソードを読んで行くと、子どもに係わるおとなの言動の影響の大きさや、読書の影響、自然の中での遊びなどが印象に残ります。
特に子どもに与える教師の影響は、人生を左右しかねない大きなものであることを改めて感じます。
シルクロードを始め、世界各地へ
第4章以降は、シルクロード(中国西域)、メキシコ、イスタンブール、ドイツ、インド、パタゴニア、オーストラリア、シベリア、タクラマカン砂漠(「タクラマカン」とは、ウイグル語で、「一度入ったら、出られない」という意味)と楼蘭、モンゴル、アマゾン、インドシナ半島、そして太平洋の島などについて語られています。
特にタクラマカン砂漠・楼蘭には深い思い入れが
どの章も、著者の独自の視点でその土地の風土や文化が語られていて、とてもおもしろいのですが、特に第9章は著者が子どもの頃から憧れ続けていたタクラマカン砂漠・楼蘭へ、実際に行くことができたという記録です。著者の思い入れの深さが伝わって来ます。
『十五少年漂流記』のモデルの島も訪れる
また、第12章にジュール・ベルヌ(本文中では、「ヴェルヌ」)の『十五少年漂流記』の島のモデルについての記述があります。
これまでこの島のモデルは、パタゴニアのハノーバー島という無人島だと思われていたそうなのですが、実はそうではなくてニュージーランドのチャタム島ではないかという説が出て来たそうです。
著者が実際にチャタム島を訪れたところ、湖、岬、岩などの位置や形が、ベルヌの描写の通りだったそうです。子どもの頃、『十五少年漂流記』を楽しんで読んだ館長には、とても興味深い文章でした。
読んでいて、駆け足で世界中旅したような気分にさせてくれる本であり、また夢を与えてくれる本でもあると思います。
著者について
著者は、1944年(昭和19年)、東京生まれ。会社員を経て作家になり、「本の雑誌」編集長や、映画「白い馬」の監督など、多方面で活躍。著書は、『哀愁の町に霧が降るのだ』『銀座のカラス』、『岳物語』など、多数。
岩波ジュニア新書について
なお、岩波ジュニア新書は、目録にも本自体にも、はっきりと「中学生から」と、記載されているわけではありません。「ジュニア」という言葉の解釈もいろいろありますが、「若い世代向け」ということは確かで、本の内容や、「ジュニア新書」と銘打ってあることから、出版社による「中学生から」と解釈しています。