文庫判
(日本)
松本 侑子 著
村西 恵津 カバーイラスト
幻冬舎文庫
¥600(本体価格¥571+税5%)
名作の舞台を実際に訪れ、土地と作家についても語る本
2004年(平成16年)2月、第一刷発行。この本は、イギリス人作家による数々の名作の舞台を著者が実際に訪ね、その土地や作品のあらすじ、作家の生涯について述べる、「紀行文」プラス「本のガイドブック」という形のものです。
ですから、読者は名作の背景について知るだけではなく、実際に著者の眼に映った名作の舞台の描写を読むことで、自分も旅行したような気持ちを味わうことができます。
各章に名作ゆかりの土地の写真
本の巻頭には、「〜物語を訪ねる英国紀行〜」として、名作のタイトルと地名を記したイギリスの地図が、また、各章には必ずその名作ゆかりの土地の写真が掲載されていて、読者の理解を助けてくれます。写真の中には、著者ご自身が写っているものもあります。(写真はすべてモノクロです。)
この本で取り上げられている物語のタイトル
本文は、15章で構成されています。
取り上げられている物語の主なものは、『ピーターラビットのおはなし』『クマのプーさん』『十二夜』『ジーキル博士とハイド氏』『宝島』『嵐が丘』『白昼の悪魔』『そして誰もいなくなった』『クリスマス・キャロル』『シャーロック・ホームズの冒険』『不思議の国のアリス』『水仙』『ピーター・パンとウェンディ』『ツバメ号とアマゾン号』『トムは真夜中の庭で』などです。
目次には、物語のタイトル以外に、作品の舞台となった土地やその作者ゆかりの土地の地名が付記されています。その目次に付記された土地に、実際に著者が訪れています。
巻末には、著者が推薦する、この本で取り上げた作品の関連書が掲載されています。
各章の扉に、その章の本の表紙の写真
また、各章の扉のページには、その章で取り上げられている本の表紙の写真が掲載されています。15章は、物語ではなく、シェークスピア劇を上演した劇場について述べられていますので、この章の扉には、『シェークスピア』(清水書院)の表紙が掲載されています。
なお、10章の『水仙』は「物語」ではなく、「詩」です。
一般向けなので、漢字のルビは少ないのですが、読みやすい文章なので、中学生から読めると思います。
「紀行文」がベース、眼前にその土地が浮かぶような描写
文章は、「紀行文」をベースにしていて、その他に作者についてやあらすじなどが述べられています。たとえば2章の『クマのプーさん』では、列車やタクシーで目的地を訪れる途中の描写が細かく、読者の眼前にその土地の風景が浮かんでくるようです。
この『クマのプーさん』の章に限らず、その章で取り上げている作品に関するさまざまな情報が、わかりやすく述べられています。
クリスティのファンに興味深い記述
アガサ・クリスティのファンならば、6章で述べられている、『白昼の悪魔』の舞台設定と同じ環境の島が本当にあって、NHKテレビで以前放送された「名探偵ポアロ」シリーズの『白昼の悪魔』でも使われた「シー・トラック」という水陸両用トラックに、著者が実際に乗って移動したくだりなど、とても興味深く読めると思います。
ファンタジーのファンにも興味深い記述
また、ファンタジーのファンならば、13章の『トムは真夜中の庭で』に登場した「イーリーの大聖堂」に著者が訪れて、作品中の「時間を永遠ととりかえたロビンソン氏」の墓碑が実在した、ということに興味を惹かれることでしょう。
実際に、その土地を訪れなければわからない事実が多く述べられていて、目次に挙げられた作品の愛読者には、とても楽しい本です。
その物語のファンに嬉しい写真も多数掲載
写真については、その物語の舞台となった土地、作者の生家、「ディケンズ博物館」や「シャーロック・ホームズ博物館」の内部、『ツバメ号とアマゾン号』の「アマゾン号」のモデルとなったヨット、前述した『トムは真夜中の庭で』に登場する「イーリーの大聖堂」と「ロビンソン氏の墓碑」など、その作品のファンにとっては、とても嬉しいものが多数掲載されています。
あらすじが述べられている物語のタイトル
あらすじについては、1〜2行で簡潔にまとめられているもの、数行で述べられているもの、1〜2ページから数ページに渡って述べられているものと、まちまちです。あらすじが数行以上で述べられている作品名は、下記の通りです。
| 書名 | 作者名 |
| 十二夜 | シェイクスピア |
| ジーキル博士とハイド氏 | スティーヴンソン |
| 宝島 | スティーヴンソン |
| 嵐が丘 | エミリ・ブロンテ |
| 秘密の花園 | バーネット |
| 白昼の悪魔 | アガサ・クリスティ |
| そして誰もいなくなった | アガサ・クリスティ |
| クリスマス・キャロル | チャールズ・ディケンズ |
| 不思議の国のアリス | ルイス・キャロル |
| ピーター・パンとウェンディ | ジェームズ・バリー |
| ツバメ号とアマゾン号 | アーサー・ランサム |
| トムは真夜中の庭で | フィリパ・ピアス |
| アーサー王伝説 | 不詳 |
『トムは真夜中の庭で』のあらすじは、特に詳細に
なお、上記の作品のうち、「白昼の悪魔」と「そして誰もいなくなった」はミステリーですが、犯人については言及されていません。また、『トムは真夜中の庭で』のあらすじは、特に詳しく述べられています。
著者の松本侑子さんについて
著者の松本侑子さんは、1987年(昭和62年)に「巨食症の明けない夜明け」で「すばる文学賞」受賞。翻訳家、作家。訳書に『赤毛のアン』(集英社)『アンの青春』(集英社)、小説に『別れの美学』(幻冬舎文庫)などがあります。