A5変型判(19.5×15.5cm)
文庫判(17.5×13.5cm)
(日本)
江戸川 乱歩 著
藤田 新策 装丁
佐竹 美保 さし絵
ポプラ社
A5変型判 ¥1,029(本体価格¥980+税5%)
文庫判 ¥630(本体価格¥600+税5%)
「少年探偵」シリーズの10冊目
「少年探偵・江戸川乱歩」シリーズ10冊目。1954年(昭和29年)、雑誌「少年」(光文社刊)に連載。
『鉄塔王国の恐怖』のあらすじ(冒頭部分のみ)
明智探偵の助手の小林芳雄君は、ある夕方、明智先生のお使いの帰り道で白ひげのおじいさんに会いました。
頭も口ひげも白くて、長いあごひげに流行遅れの洋服といった奇妙な風体のおじいさんは、小林君が来るのを「待っていた」と言います。
そして、三十年も四十年も前に子どもたちが喜んで見たという、レンズを使った仕掛け「のぞきカラクリ」を見るように勧めます。
小林君がその「のぞきカラクリ」の穴をのぞいて見ると、レンズの働きのせいで、その中には山や森が広がっているように見えました。
その森の中には、塔のあるお城のような黒い建物があり、なおも見続けていると、黒いカブトムシが現れました。
そのカブトムシは、塔の窓の大きさに比べると、まるで人間ぐらいの大きさに感じられて、一角獣の化け物のように見えました。
小林君活躍の巻
前作の『宇宙怪人』で、宇宙や宇宙人にまで思いを馳せることになった「少年探偵」シリーズは、この巻ではいつものムードに戻ります。事件の動機も前々作までのものに近くなります。
そして、冒頭の一行目から登場する明智探偵の助手、小林少年が活躍し、ラストまで犯人側との智恵比べが展開されます。
但し、いつもの少年探偵団は登場しません。
孤軍奮闘の小林くんの七つ道具はなかなかのもので、新しい道具もいろいろと披露されています。
また、明智探偵事務所の仕掛けや、窮地に陥ったときの小林君の冷静さや工夫、自動車絡みの冒険ぶりが見ものです。
現在であれば、自動車絡みの展開というのは当たり前かも知れませんが、この作品が連載されたのは昭和29年で、自動車の数も少なかった時代です。当時の子どもたちには、小林君の冒険がとても新鮮に映ったことでしょう。
また、この巻では敵のアジトが本格化(?)してきました。秘境に自分だけの世界を構築するという、犯人側の(つまり乱歩の)趣味が、少年ものにもだんだん強く出てきました。
とはいうものの、さすがに一般向け作品ほどあくが強くないので、少年ものの「娯楽」としてはぴったりのストーリー展開を、小林君と共に冒険するつもりで楽しめる巻です。
「カブトムシ」と「のぞきカラクリ」
この巻で、乱歩が取り上げたアイテムは「カブトムシ」。さし絵を見るとまるで昆虫SFかと錯覚します。「カブトムシ」を「妖虫」に仕立て上げるのは乱歩の筆力ですが、冒頭ではその一助として、「のぞきカラクリ」を使っています。
「のぞきカラクリ」というのは、江戸時代から大正時代にかけて流行した、レンズを使った紙芝居の前身ともいえる街頭演芸です。
長方形の箱の中に絵を入れておいて、箱の表側のレンズをはめ込んだ穴からその絵をのぞいて楽しむ形のもので、箱の横に人がついて、絵を動かしたり、説明をしたりしたそうです。
「のぞきカラクリ」という言葉からすぐに連想されるのは、乱歩の一般向け作品の名作『押絵と旅する男』です。
『押絵と旅する男』は、犯罪とは関係のない幻想的なストーリーの短編で、「のぞきカラクリ」の中の押絵がモチーフとなっています。(「押絵」というのは、布で作ったレリーフのような手芸作品。羽子板に使われています。)
「少年探偵」シリーズのポプラ社の旧作では『押絵と旅する男』は収録されていません。子ども向けに、書き直されてはいないようです。
『鉄塔王国の恐怖』が書かれたのは先に述べたように昭和29年で、当時でも「のぞきカラクリ」という仕掛けは、懐かしいものになっていたことと思います。
この巻では「のぞきカラクリ」について、『いまの紙しばいみたいな』という一文があります。
すでに現在では歴史の風物となった、街頭演芸の「のぞきカラクリ」と「紙芝居」という言葉がノスタルジーを感じさせて、冒頭から読者を物語に引き込んでくれます。
『鉄塔王国の恐怖』のオンライン書店のページ
A5変型判 (ハードカバー)
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少年探偵10 鉄塔王国の恐怖
(セブンアンドワイ)
文庫判 (普通の文庫判より新書判に近いサイズ)
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旧版 (ハードカバー)
少年探偵江戸川乱歩全集 24 (24)(アマゾン)
左の画像は、ポプラ社の旧版の江戸川乱歩著、柳瀬茂カバー絵・さし絵の『鉄塔王国の恐怖』の表紙です。『鉄塔王国の恐怖』は、旧版では24冊目でした。旧版のサイズは18.5cm×13.5cmで、B6判ぐらいの大きさです。
旧版 文庫判
アマゾンで探しましたが、「単行本」の注文ページしかありませんでした。この本の文庫判が欲しい方は、他の古書店か図書館で探してみてください。
このページの情報は、ポプラ社の目録や名張市図書館のホームページ、雑誌「サライ」の特集「江戸川乱歩と少年探偵団」などによります。
「のぞきカラクリ」や「押絵」については、学研の『グランド現代百科事典』(1980年発行)を参考にしました。