18.5cm×13.5cm(B6判ぐらいの大きさ)
(日本)
江戸川 乱歩 著
(武田 武彦 文)
柳瀬 茂 カバー絵
山内 秀一 さし絵
ポプラ社
(この巻は絶版)
「少年探偵」シリーズ旧版の27冊目
「少年探偵・江戸川乱歩」シリーズ旧版の27冊目。第一刷発行は1970年(昭和45年)。旧版のみの発行で、現在発行されている新版のシリーズには含まれていませんので、図書館か古書店で探してみてください。
1930年(昭和5年)から翌年にかけて、雑誌「キング」(講談社刊)に掲載された一般向けの『黄金仮面』を、子ども向けに書き直した作品です。この巻のまえがきによると、乱歩本人ではなくて、武田武彦さんが平易な文章に書き直したということです。
『黄金仮面』のあらすじ(冒頭部分のみ)
ある年の春に、どこからともなく金色(こんじき)の仮面をつけた怪人の噂が流れました。
それは新聞記事になるほどの騒ぎになり、少年探偵団の小林君も、団員の島田君と銀座でその仮面をつけた人物を目撃します。
また、少年探偵団の別の団員、大友君も踏み切りの事故現場でその怪人を目撃します。
その後、六月に上野公園で「平和産業博覧会」が開催され、出品物の中では「志摩の女王」と呼ばれる時価五千万円の大きな真珠が注目を集めていました。
そして、皇太子殿下がこの博覧会にご来場するという日に、この「志摩の女王」を陳列している第一号館では、ある異変が起きていました。
めまぐるしく移り変わる舞台
物語の冒頭には、少年探偵団の団長である小林君と、他の団員たちが登場しますが、その後は小林君と明智探偵のみが活躍し、団員たちは出番がありません。
物語は東京から日光へ、そしてまた東京の各所へとめまぐるしく舞台が移り変わり、ストーリーも思いがけない方向へ飛びます。
少々違和感あり
個々のエピソードにはおもしろいものがあるし、ストーリー展開に意外性があるので、もっとこの世界にのめりこんで楽しめると思えるのですが、館長には少々違和感がありました。
それは多分、元は一般向けのこの物語を子ども向けに書き直したのが、乱歩本人ではなくて、別の方(武田武彦さん)だったということからくる、文章に対する違和感のように思います。
武田さんの文章に問題があるというのではなく、やはり乱歩の文章の言い回しや雰囲気に慣れていると、別人の書き直しというのはどうしても分が悪いことになることでしょう。
そして文章以外にも、ストーリーそのものが展開が速すぎて、少々取りとめのないような印象も受けます。ひとつひとつのエピソードが消化不良のまま次へ進むというような感じです。但しこれはあくまで、館長個人の感想です。受け取り方は個々人にとって異なるでしょう。
「ルパン」と「不二子」登場
この巻で登場する「黄金仮面」は、少年探偵のシリーズを読んできた読者には、怪人二十面相を連想させます。その怪人二十面相のモデルは、フランス人作家「モーリス・ルブラン」の作りだした「アルセーヌ・ルパン」と言われています。
この巻ではなんと、そのルパンが登場します。そして、「不二子」という名の少女も登場します。「ルパン」と「不二子」。どこかでよく慣れ親しんだ名前です。アニメの『ルパン3世』のルーツはこの巻にあったのかと、館長は読んだ途端に思いました。
アニメの原作であるマンガの『ルパン3世』の連載が始まったのは1967年(昭和42年)からだそうで、一般向けの『黄金仮面』が発表されたのは1930年(昭和5年)です。
その後、ポプラ社の明智小五郎文庫で、こども向けに書き直した『黄金仮面』が1953年(昭和28年)に初版発行ですから、『ルパン3世』の作者のモンキー・パンチさんがこの本から着想の一部を得たのではないかと思えます。
ただ、作者のモンキー・パンチさんは、『黄金仮面』と『ルパン3世』との関係には、否定的だということです。
この巻のさし絵の「不二子」さんは、時代を反映して着物姿でも登場します。着物姿の「不二子」さんと黄金仮面のツーショット(?)はなんともいえず、シュールです。
エドガー・アラン・ポーの著作も登場
そしてこの物語の後半、「江戸川乱歩」というペンネームの元である作家「エドガー・アラン・ポー」(作中では「ポオ」と表記)の著作の再現シーン(?)も登場します。
これに絡む大掛かりなトリックが、推理小説としてのクライマックスといえます。
この物語の舞台となる場所や人物、トリックなどなど、『黄金仮面』はとにかく、いろいろな意味で「盛りだくさん」の物語です。
少なくても中学生以上に
少年探偵シリーズの26巻までとは異なり、殺人事件が発生します。さし絵はそれほどこわくないと思いますが、館長は、小学生にはお勧めしません。中学生以上で、フィクションをフィクションと思える人でないと、向かないでしょう。
「少年探偵・江戸川乱歩」シリーズの旧版についてのページでも述べていますが、子ども向けに書き直したといっても元は一般向けの趣味性の強い作品です。
27巻目以降の作品は、「おとなが短時間で読める乱歩の世界のエッセンスのような作品群」という位置づけのものです。ご注意ください。
このページの情報は、ポプラ社の目録や名張市図書館のホームページ、雑誌「サライ」の特集「江戸川乱歩と少年探偵団」などによります。