18.5cm×13.5cm(B6判ぐらいの大きさ)
(日本)
江戸川 乱歩 著
柳瀬 茂 カバー絵 さし絵
ポプラ社
(この巻は絶版)
「少年探偵」シリーズ旧版の28冊目
「少年探偵・江戸川乱歩」シリーズ旧版28冊目。第一刷発行は、1970年(昭和45年)。旧版のみの発行で、現在発行されている新版のシリーズには含まれていませんので、図書館か古書店で探してみてください。
1937年(昭和12年)10月から翌年にかけて、雑誌「日の出」(新潮社)に掲載された一般向けの『悪魔の紋章』を、子ども向けに書き直した作品です。
『呪いの指紋』のあらすじ(冒頭部分のみ)
東京丸の内のビル街。その中に、宗方隆一郎博士の探偵事務所「宗方研究室」がありました。
その事務所の石段を、這うようにして上がってゆく27、8歳の青年がいました。その青年は急病になったかのように苦しそうに、やっと石段を上がり、宗方研究室に転がり込みました。
青年は「今夜、人が殺される」「毒を飲まされた」と告げ、ポケットから封筒と小さな紙包みを出して「先生に」と言って、事切れます。
この青年は、宗方研究室の木島という助手で、先に依頼された事件を調べている最中でした。
時代は昭和30年という設定の復讐の物語
この『呪いの指紋』の元の作品、『悪魔の紋章』の連載が開始されたのは1937年(昭和12年)ですが、少年探偵シリーズの旧版に収録されたこの巻では、1955年(昭和30年)の物語という設定です。
作者自身のまえがきに、これは「かたきうち」の物語で、このような事をしてはいけないということを表現したかった、という主旨の文章があります。
確かにこの作品を読むと、「いくらなんでもそこまでするなんて」とか「復讐に人生をかけるというのは不毛なこと」と感じます。
物語は二つの謎を追う
この事件で脅迫を受けるのは、川手正太郎という人物です。川手氏自身は、全く恨みを買う覚えがないので、なぜ執拗に脅迫を受け、家族や自分の命が狙われるのかわかりません。
ですから、「なぜ狙われるのか?」と「犯人は誰なのか?」とが物語の大きな謎になります。
珍しい三重の指紋がサイン
物語は相次ぐ殺人事件に、珍しい三重の指紋がサインとして使われ、いろいろな小道具・大道具が絡んで二転三転して読者を引っ張ってゆきます。
この辺りの道具立てや不気味な雰囲気は、乱歩の独壇場です。そして、思いがけない結末を迎えます。
犯人は推測可能
恨みの理由や復讐劇は、思いもよらない展開となりますが、犯人については、アガサ・クリスティーの作品を多数読んでいると、推測可能です。実はクリスティーの作品に、少し犯人像が似ているものがあります。
不気味なイメージを取り払って、固定観念を疑ってかかってみると、多分推測できる読者が多いのではないかと思います。
明智探偵はラストで登場
少年探偵シリーズでおなじみの中村警部は最初から、小林少年と明智探偵は物語も大詰めを迎えてから登場します。
明智探偵は「真打登場」という感じで、あざやかに謎を解いて決めてくれます。
少なくても中学生以上に
殺人事件が複数発生しますが、さし絵はあまりこわくありません。
但し、少年探偵シリーズの26巻までとはやはり雰囲気が異なります。気の弱い小学生なら「こわい」と思うでしょう。「小学上級〜中学生」と銘打たれていても、館長は、小学生にはお勧めしません。
「少年探偵・江戸川乱歩」シリーズの旧版についてのページでも述べていますが、子ども向けに書き直したといっても元は一般向けの趣味性の強い作品です。
中学生以上で、フィクションをフィクションと思える人でないと、向かないでしょう。
この巻も含めた27巻目以降の作品は、「おとなが短時間で読める乱歩の世界のエッセンスのような作品群」という位置づけのものです。
小学生には、1冊目の『怪人二十面相』から26冊目の『二十面相の呪い』までをお勧めします。
このページの情報は、ポプラ社の目録や名張市図書館のホームページ、雑誌「サライ」の特集「江戸川乱歩と少年探偵団」などによります。