「名探偵」の代名詞「シャーロック・ホームズ」
「名探偵」と言えば「シャーロック・ホームズ」、「シャーロック・ホームズ」と言えば、「名探偵」。
コナン・ドイルが発表してから、世界中の数多くの人々に愛され続けている「シャーロック・ホームズ」の物語ですが、このページではまず、偕成社版の「小学5、6年から」の全集を中心に紹介します。
作者ドイルは当初、眼科医
作者のアーサー・コナン・ドイルは1859年(日本では安政6年。江戸末期。)生まれ。1930年(昭和5年)没。
眼科医になったものの、患者が少なく、それまでに「ホームズもの」の『緋色の研究』や、『四つの署名』、歴史小説などを書いた経験があったことから、医者を辞めて、作家のみで生活することになります。
「ホームズもの」は6編のみの予定だった
ドイル本人は、「ホームズもの」を、その後の6編の短編のみで打ち切るつもりだったのですが、どんどん人気が出て、掲載誌ストランド・マガジンの編集長の強い依頼により、続けてまた短編を6編書くことになります。
この12編が『シャーロック・ホームズの冒険』(偕成社版では上・下巻)に収められます。
「ホームズもの」を書くのは、もはや運命
歴史小説を書きたいドイルは、この12編の最後の物語でホームズを殺して、ホームズものを終わりにしようと考えますが、母親に説得されてそのときは思い留まりました。
ドイルは「ホームズもの」を書くのをやめようとして、原稿料をつり上げるのですが、そのたびに出版社が要求を飲み、彼の目論見ははずれて、ホームズものを書き続けることになるのでした。
その後『シャーロック・ホームズの思い出』の最後の物語で遂にホームズを死なせたものの、すでに世界中に大勢いた「シャーロッキアン」と呼ばれるホームズマニアが怒って、ドイルに対する非難ごうごう、大騒ぎになりました。
喪章をつけて歩く人まで出たというのは有名な話です。
さすがに、この抗議の嵐を無視しきれず、8年後にドイルは再度「ホームズもの」を書き始めることになります。
これほどまでに人々の心をとらえる「シャーロック・ホームズ」に関する逸話の数々は、すでに伝説の域に達していると思われます。
「ホームズもの」の魅力
「ホームズもの」の魅力は、とても語り尽くせるものではないように思いますが、あえて思いつくままに挙げてみます。
たとえば、その多くが実在の場所を舞台にしたリアリティー、事実の観察に基づいて組み立てられる推理のおもしろさ、ホームズの独特なキャラクター、助手役のワトスンとの対照的なキャラクターの組み合わせの妙、持ち込まれる事件の筋立ての独創性などが考えられます。
着眼点のすばらしさとストーリーテラーとしての才能
ドイルのストーリーテラーとしての才能はすばらしいもので、1世紀以上経た現在でも、ストーリーのおもしろさは、決して色あせることはありません。
個々の物語を詳しく見て行けば、たとえば『まだらの紐』では、ある動物に関して、ありえない設定ではないかと思われるところもあります。しかし、着眼点のすばらしさや、その動物を設定することによる独特の雰囲気など、物語自体に大きな魅力を与えています。
分類すれば文学的推理小説
ただ、「ホームズもの」は、物語の中ほどまでに、読者に対して手がかりがすべて提示されて、作者と読者が謎解きを競う、というタイプの推理小説ではありません。事件の解決は、ホームズの説明を待つ、というものです。
もちろん、作品中に手がかりが全くないというのではなく、いろいろと提示はされますが、それを組み立てて、疑問点を解き明かすのが、ホームズの頭脳です。文学的推理小説とでも、言えるかも知れません。
何度も読み返したくなる力を持つおもしろいミステリー
物語の中でも特にミステリーは、「犯人や結末がわかってしまうともう読まない」という方も多いかも知れません。確かに、次にどんな展開になるのか、犯人は誰か、ということがまず興味の対象であることに間違いありません。
しかし、本当に良い本、おもしろい本というのは、ミステリーであっても、一度読んでそれっきりというものではありません。その物語の展開すべてがわかっていても、何度も読み返したくなる力を持つものです。
30年間読み返しても、飽きないシリーズ
事実、館長は10才ごろから30年以上に渡って「ホームズもの」を読み返しています。子どもの頃は、小学生向けの偕成社版で、長じてからは、各社の文庫版で読んでいます。
しばらく読まずにいるとまた、読み返したくなる、そういう魅力を持ったシリーズです。
偕成社版の小学上級向けを中心に紹介
この物語に、ぜひ、子どもの頃から親しんでほしいと思います。
このページでは、まず、「小学校5,6年から」の偕成社版を紹介します。この偕成社版は以前、1960年代に出版されていたものから一新され、さし絵が原作出版当時のものになりました。当時の雰囲気が伝わり、とても良いと思います。
タイトルも訳文も原作に忠実
また、以前のものは、一部の作品のタイトルに原題とは違ったものが付けられていて、文庫版を読むようになってから違和感を覚えました。
1967年(昭和42年)初版の館長所有の版は『青い紅玉』が『悪魔のダイヤ』、『ライゲートの大地主』が『12時15分の惨劇』と変えられていました。これではまったく別の物語と勘違いしてしまいます。
現在の版はそれも直されて原題通りなので、安心してお勧めできます。おとなになってから、一般向けの「ホームズもの」を読んでも違和感がないと思います。
一般向けの文庫本の「ホームズもの」と多少異なるタイトルもありますが、それは訳者の言葉の選びかたによるものです。
また、この偕成社版は、子ども向けではありますが、完訳となっています。
以前出版されていた子ども向けの版では、原作にない文章が付け加えられたり、文章全体のイメージが一般向けとはかなり違って、深みが足りない印象がありましたが、現在の版はそんなことは、ありません。
一般向けの本の言葉が理解しやすい、平易なものに置き換えられただけです。館長が子どもの頃読んだ版は、どうやら子ども向けを意識しすぎて、勧善懲悪的色彩が濃すぎたようです。
気になる部分は保護者が説明を
以前の版の改変は、「コカイン」だの「モルヒネ」だの、子ども向けにはふさわしくない事物を扱ったところがあったからとも思われますが、その当時の、その国の社会状況として、ドイルが書いたわけですから、やはり完訳の方が良いと思います。
気になるようであれば、保護者が補足説明することで、解決できると思います。
あとがきも、おもしろい
また、偕成社版のあとがきには「シャーロック・ホームズを推理する」と題されて、いろいろな角度から「ホームズもの」や、ミステリー全般についての一文が載せられています。このあとがきも興味深いものです。
参考までに作品発表時のドイルの年令も記載
なお、各作品の説明ページには、参考までにドイルの年令を記載しています。これはその作品が発表された年の、誕生日を迎えた以降の年令です。
(誕生日前に発表された作品でも、その年の誕生日以降の年令で記載しています。分けて細かく記載すると返って混乱するかも知れませんので。)
初めて読む方は『シャーロック・ホームズの冒険』を
これから、初めて「ホームズもの」を読むという方には、長編よりも、短編集の『シャーロック・ホームズの冒険』をお勧めします。
特に、『赤毛連盟』や、『青い紅玉』、『まだらの紐』、『ブナ屋敷』などは、「ホームズもの」のおもしろさの特徴がよく出ていて、かつ読み易く、「ホームズ」入門には最適ではないかと思っています。
偕成社版の価格、タイトル
偕成社版の「シャーロック・ホームズ全集」の本のサイズは、20×14cm、ハードカバー、価格はどれも、\1,260(5%税込み)です。書名には番号が記載されています。なお、14冊セットもあり、価格は\17,640(5%税込み)です。
訳者の「各務」さんは「かがみ」、内田庶さんの「庶」は「ちかし」と読みます。
下記のリンクは、各巻の説明ページへ飛びます。
| 書名 | 訳者 |
| 1 緋色の研究(長編) | 各務 三郎 |
| 2 四つの署名(長編) | 中上 守 |
| 3 バスカビル家の犬(長編) | 各務 三郎 |
| 4 恐怖の谷(長編) | 内田 庶 |
| 5 シャーロック・ホームズの冒険(上) ボヘミアの醜聞/赤毛連盟 花むこ失踪事件/ボスコム谷のなぞ 五つぶのオレンジの種/唇のねじれた男 |
常盤 新平 中尾 明 |
| 6 シャーロック・ホームズの冒険(下) 青い紅玉/まだらの紐/技師の親指 独身の貴族/緑柱石の宝冠/ブナ屋敷 |
平賀 悦子 各務 三郎 |
| 7 シャーロック・ホームズの思い出(上) 白銀号事件/黄色い顔/株式仲買店員 グロリア・スコット号/マスグレーブ家の儀式 ライゲートの大地主 |
沢田洋太郎 大村美根子 |
| 8 シャーロック・ホームズの思い出(下) まがった男/入院患者/ギリシア語通訳 海軍条約/最後の事件 |
大村美根子 沢田洋太郎 中尾 明 |
| 9 シャーロック・ホームズの帰還(上) 空屋の冒険/ノーウッドの建築業者 踊る人形/さびしい自転車乗り プライオリ学院/ブラック・ピーター C・A・ミルバートン |
青木日出男 内田 庶 中上 守 大村美根子 |
| 10 シャーロック・ホームズの帰還(下) 六つのナポレオン像/三人の学生 金縁の鼻眼鏡/スリー・クォーター失踪 アベ荘園/第二のしみ |
内田 庶 中上 守 沢田洋太郎 |
| 11 シャーロック・ホームズ最後の挨拶(上) ウィスタリア荘/ボール箱/赤い輪党 ブルース・パーティントン設計図 |
大村美根子 常盤 新平 青木日出男 |
| 12 シャーロック・ホームズ最後の挨拶(下) 瀕死の探偵/フランシス・カーファックスの失踪 悪魔の足/最後の挨拶 |
各務 三郎 |
| 13 シャーロック・ホームズの事件簿(上) マザリンの宝石/ソア橋/這う人 吸血鬼/三人ガリデブ/高名の依頼人 |
福島 正実 加藤 喬 常盤 新平 内田 庶 |
| 14 シャーロック・ホームズの事件簿(下) 三破風館/白面の兵士 ライオンのたてがみ/引退した絵具師 覆面の下宿人/ショスコム荘 |
内田 庶 福島 正実 加藤 喬 矢野浩太郎 |
なお、出版順に読みたい方は、以下の順でお読みください。出版順に並べ替えたものです。
| 書名 | 訳者 |
| 1 緋色の研究(長編) | 各務 三郎 |
| 2 四つの署名(長編) | 中上 守 |
| 5 シャーロック・ホームズの冒険(上) ボヘミアの醜聞/赤毛連盟 花むこ失踪事件/ボスコム谷のなぞ 五つぶのオレンジの種/唇のねじれた男 |
常盤 新平 中尾 明 |
| 6 シャーロック・ホームズの冒険(下) 青い紅玉/まだらの紐/技師の親指 独身の貴族/緑柱石の宝冠/ブナ屋敷 |
平賀 悦子 各務 三郎 |
| 7 シャーロック・ホームズの思い出(上) 白銀号事件/黄色い顔/株式仲買店員 グロリア・スコット号/マスグレーブ家の儀式 ライゲートの大地主 |
沢田洋太郎 大村美根子 |
| 8 シャーロック・ホームズの思い出(下) まがった男/入院患者/ギリシア語通訳 海軍条約/最後の事件 |
大村美根子 沢田洋太郎 中尾 明 |
| 3 バスカビル家の犬(長編) | 各務 三郎 |
| 9 シャーロック・ホームズの帰還(上) 空屋の冒険/ノーウッドの建築業者 踊る人形/さびしい自転車乗り プライオリ学院/ブラック・ピーター C・A・ミルバートン |
青木日出男 内田 庶 中上 守 大村美根子 |
| 10 シャーロック・ホームズの帰還(下) 六つのナポレオン像/三人の学生 金縁の鼻眼鏡/スリー・クォーター失踪 アベ荘園/第二のしみ |
内田 庶 中上 守 沢田洋太郎 |
| 4 恐怖の谷(長編) | 内田 庶 |
| 11 シャーロック・ホームズ最後の挨拶(上) ウィスタリア荘/ボール箱/赤い輪党 ブルース・パーティントン設計図 |
大村美根子 常盤 新平 青木日出男 |
| 12 シャーロック・ホームズ最後の挨拶(下) 瀕死の探偵/フランシス・カーファックスの失踪 悪魔の足/最後の挨拶 |
各務 三郎 |
| 13 シャーロック・ホームズの事件簿(上) マザリンの宝石/ソア橋/這う人 吸血鬼/三人ガリデブ/高名の依頼人 |
福島 正実 加藤 喬 常盤 新平 内田 庶 |
| 14 シャーロック・ホームズの事件簿(下) 三破風館/白面の兵士 ライオンのたてがみ/引退した絵具師 覆面の下宿人/ショスコム荘 |
内田 庶 福島 正実 加藤 喬 矢野浩太郎 |
講談社と岩波書店からも児童向けのシリーズが
なお、この偕成社版のほかに、小学校上級からとして、講談社の青い鳥文庫から16冊、中学生以上として、岩波書店の岩波少年文庫から4冊、「ホームズ」ものが出版されています。
講談社と岩波書店の「ホームズ」シリーズについては、偕成社版の各巻の説明ページに、該当する作品を収録した巻を紹介しています。
一般向けも各社から文庫本などで出版
また、一般向けとしては、新潮社の新潮文庫、早川書房のハヤカワ・ミステリ文庫、東京創元社の創元推理文庫などから、出版されています。
こちらについても、各巻の説明ページで該当する作品を収録した本を紹介しています。
なお、一般向け文庫本のリストはこちらです。
イギリスのグラナダ放送制作のドラマがお勧め
「ホームズもの」は何度も映像化されていますが、ジェレミー・ブレッド主演のグラナダ放送制作のドラマがお勧めです。
映像化に伴い、どの作品もある程度の原作からの変更はありますが、格調高く美しい映像で、ビクトリア時代の雰囲気を伝えているように思えます。
以前、NHKで放送されていましたが、現在ではDVDで発売されています。原作を読んで気に入った人には、楽しめるドラマだと思います。
このDVDも、該当する作品を各巻の説明ページで紹介しています。ドラマ化全作品のタイトルのリストはこちらです。
なお、新潮社から「ホームズもの」のカセットやCDが発売されていました。オンライン書店の注文ページがあるものを、各巻の「偕成社以外の本・DVD」のページにリンクを貼っています。
なお、トップページに記載しているように、このサイト内に掲載している表紙画像は、すべて各出版社より、掲載の許可をいただいています。このページの表紙画像も、偕成社より許可をいただいています。
また、セブンアンドワイのアフィリエイトリンクの画像も使用しています。
このページの情報は、偕成社、講談社、岩波書店、新潮社、東京創元社の目録や、ハヤカワ・ミステリ文庫を含む各書籍の解説などによります。



