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外国のミステリー2 
小学上級から
「シャーロック・ホームズ全集」より
『シャーロック・ホームズの帰還(上)』
20×14cm
(イギリス)
コナン・ドイル 著
青木 日出夫・内田 庶(ちかし)・中上 守・大村 美根子 訳
シドニー・パジェット さし絵
偕成社
¥1,260(本体価格¥1,200+税5%)
偕成社版「シャーロック・ホームズ全集」の9冊目(短編集)
1903年(明治36年)から1904年(明治37年)にかけて、ストランド・マガジンの10月号から翌年の12月号に掲載された作品のうち、この上巻には前半の7編を収録。
「ホームズもの」の三番目の短編集。一話読み切り形式。ドイル44歳。
『シャーロック・ホームズの帰還(上)』の収録作品は『空屋の冒険』『ノーウッドの建築業者』『踊る人形』『さびしい自転車乗り』『プライオリ学院』『ブラック・ピーター』『C・A・ミルバートン』
この上巻の収録作品は、10月号掲載の『空屋の冒険』(青木日出夫訳)、11月号掲載の『ノーウッドの建築業者』(内田庶訳)、12月号掲載の『踊る人形』(中上守訳)。
そして翌年の1月号掲載の『さびしい自転車乗り』(大村美根子訳)、2月号掲載の『プライオリ学院』(内田庶訳)、3月号掲載の『ブラック・ピーター』(大村美根子訳)、4月号掲載の『C・A・ミルバートン』(青木日出夫訳)の7編です。
『空屋の冒険』はホームズ復活の作品
『空屋の冒険』は、記念すべきホームズ復活の作品。ライヘンバッハの滝で消息を絶ってから3年後、ワトソンの前にホームズが現れます。
「なぜ、死んだことにして姿を消したのか」「なぜ、またロンドンに現れたのか」が、説得力のある理由と共に、現在の事件とつながって語られます。
『空屋の冒険』は指紋を取り上げる
『ノーウッドの建築業者』は、指紋を取り上げています。
偕成社版の「作品解説」によると、ロンドン警視庁が指紋分類法を採用したのは1901年(明治34年)です。この事件は1894年(明治27年)頃の設定なので、まだ、指紋は決定的な証拠にはなりません。
しかし、ドイルはこの作品に「指紋」を登場させて、事件解決のきっかけにしています。
『踊る人形』はユニークな暗号を採用
『踊る人形』には、暗号が登場します。
やはり「作品解説」によると、この作品の暗号は「換字暗号」というのだそうです。暗号としては、比較的易しいものということですが、一見して子どもの絵にしか見えないものを選んだことで、興味が増すと思われます。
ドイル自身がこの作品を自作のベスト3に挙げているそうですが、確かに短編の暗号ものとして印象に残る作品です。
『さびしい自転車乗り』はストーカー登場
『さびしい自転車乗り』は『孤独な自転車乗り』(ハヤカワ・ミステリ文庫)、『美しき自転車乗り』(新潮文庫)としている社もあります。
原題にある“The Solitary Cyclist”の“solitary”は「ひとりの」とか「孤独の」という意味なので、『美しき自転車乗り』は少々飛躍しすぎかなと思います。
美しい音楽教師が自転車に乗るときだけ、やはり自転車に乗ったストーカーが現れます。
この作品は1895年(明治28年)の設定ですが、「作品解説」によると明治33年頃の日本では、1カラットのダイヤモンドが200円で、アメリカから輸入した自転車がやはり1台200円だったそうです。
明治28年の大工の月収が約13円50銭ということで、当時の自転車がいかに高価だったかわかります。
『プライオリ学院』は誘拐事件
『プライオリ学院』は、依頼者がいきなりホームズの部屋で気絶するという、ドラマチックな始まり方です。貴族の一人息子の誘拐事件です。
自転車のタイヤの跡や牛の足跡入りの現地の地図が掲載されていて、事件の展開を想像しながら見ることができます。
『ブラック・ピーター』は「銛(もり)」を使った事件
『ブラック・ピーター』は、ひどいドメスティック・バイオレンスを行っていた男が「銛(もり」で殺されるという、異様な事件です。
ホームズはこの作品で、「バジル船長」という変名を使いますが、この「バジル」という名が後に、子ども向けのホームズ・パロディに使われます。
このパロディについては、偕成社版の『シャーロック・ホームズの思い出(上)』のあとがきでも、触れられています。
『C・A・ミルバートン』は陰湿な悪党が登場
『C・A・ミルバートン』は、『チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン』(ハヤカワ・ミステリ文庫)や、『犯人は二人』(新潮文庫)としている社があります。
『チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン』は原題どおりですが、『犯人は二人』は完全な意訳です。
『ブラック・ピーター』とはタイプの違う悪党が登場します。見方によっては、暴力を振るうタイプより悪質です。
事件の解決はホームズの推理ではなく、偶然と、ホームズとワトソンの体を張った活動に依ります。
あとがきはE・A・ポーの小説以前の探偵役について
偕成社版のあとがきは「最初の探偵は?」です。
探偵小説の元祖、エドガー・アラン・ポー(1841年、『モルグ街の殺人』を発表)以前の物語に登場する「探偵役」の人物についてや、『恐怖の谷』でホームズが言及した実在の犯罪者であるジョナサン・ワイルドや、私立探偵の歴史(?)について触れています。
この短編集はホームズ生還の書
『シャーロック・ホームズの思い出』の『最後の事件』で、ホームズをライヘンバッハの滝に葬ったドイルですが、遂にこの『シャーロック・ホームズの帰還』で、ホームズを生還させます。
超破格の原稿料
ドイルは、アメリカのストランド・マガジン社から「6編またはこれから書く何編かに対して」、なんと1編につき5,000ドルという破格の原稿料を提示されたそうです。
しかし、金額だけにつられた訳ではなく、熱心な読者からの要望や、ドイル自身の「ホームズもの」に対する愛着があったから「ホームズもの」を再開することになったと思われます。
早朝より書店に列、増刷に次ぐ増刷
1901年(明治34年)に発表された『バスカビル家の犬』は、『最後の事件』以前のもの、という設定ですから、実質的には、この短編集の『空屋の冒険』がホームズ生還の第一作目です。
「ホームズもの」再開に読者は喜び、早朝から書店の前に並んで本を買い求め、増刷に次ぐ増刷だったそうです。「ホームズもの」がいかに読者に愛されていたか、わかります。
空白の期間のドイルは、旅行と歴史物などの執筆
『シャーロック・ホームズの思い出』の『最後の事件』がストランド・マガジンに掲載されたのは1893年(明治26年)で、『バスカビル家の犬』の掲載は、1901年(明治34年)、この『シャーロック・ホームズの帰還』は1903年(明治36年)ですから、「ホームズもの」に関してはかなりの空白の期間があります。
この間ドイルは、アメリカへ講演旅行に出かけたり、1892年(明治25年)に書いた短編『1815年の落伍者』が脚色されて上演されたり、本来書きたかった歴史小説『ジェラール代将の勲章』や、ボクシングを扱った『ロドニー・ストーン』を執筆しています。
また、エジプトへも旅行して、その体験を生かした『コロスコの悲劇』を執筆したり、かなり精力的に仕事をしています。
そして1897年(明治30年)には、後に再婚することになるジェーン・レッキーという女性に出会っています。
『シャーロック・ホームズの帰還(上)』のオンライン書店のページ
偕成社 20×14cm (A5判より縦が1cm、横が8mm小さいサイズ)
シャーロック=ホームズの帰還 上 シャーロック=ホームズ全集 (9)
(アマゾン)
シャーロック・ホームズ全集9 シャーロック・ホームズの帰還 上
(セブンアンドワイ)
『シャーロック・ホームズの帰還(上)』の偕成社以外の本やDVDのページはこちらです。
『シャーロック・ホームズの帰還(上)』関連のホームページ
「シャーロック・ホームズ全集」の出版社
偕成社
「シャーロック・ホームズの冒険」のDVD(ジェレミー・ブレッド主演グラナダ放送のドラマ)の発売・販売元
ハピネット・ピクチャーズ
「シャーロック・ホームズの冒険」のDVD(ジェレミー・ブレッド主演のグラナダ放送のドラマ)についての個人サイト(ネタバレあり、未読の方は注意を)
シャーロック・ホームズの冒険研究所
(当サイトよりあらすじを詳述、ドラマの写真を多数掲載)
221b Baker Street
(原作と比較し、ドラマについて文章にて解説、あらすじは特に詳述)
「シャーロック・ホームズ博物館」の日本語サイト
シャーロック・ホームズ博物館
「シャーロック・ホームズ」シリーズの舞台であるイギリスの政府公認日本語公式サイト
UK NOWサイト
(イギリスに関するさまざまな情報を網羅)
なお、トップページに記載しているように、このサイト内に掲載している表紙画像は、すべて各出版社より、掲載の許可をいただいています。このページの表紙画像も、偕成社より許可をいただいています。
また、説明文で使用している辞書は、三省堂の新クラウン英和辞典第3版です。
このページの情報は、偕成社、講談社、岩波書店、新潮社、東京創元社の目録や、ハヤカワ・ミステリ文庫を含む各書籍の解説などによります。