29.8×23.7cm
(日本)
網野 善彦 文
司 修 絵
岩波書店
¥2,520(本体価格¥2,400+税5%)
日本の「河原」について中世を中心に描く
1988年(昭和63年)第一刷発行。この絵本は、日本人が特別な価値観を持って接して来た「河原」について中世の時代を中心に描いたものです。
シリーズの他の本と同様に左開き、見開き2ページでひとつの絵が描かれています。絵の下には2行の説明文が付けられています。物語の主人公は、西日本地方の「河原」と「中洲」そのものです。
「河原」は墓所や死刑の場、そして芸能も行われた
絵本は原始時代から始まり、9世紀頃の河原が人を葬る場所であったこと、また平安時代末期から鎌倉時代の武士の台頭した時代には、河原で死刑が行われたことが描かれます。
そして河原で市が開かれ、また死んだ牛馬の解体が行われていたこと、次いで河原が芸能の行われるところでもあったことや、南北朝や室町時代と動乱の時代の暮らしが描かれます。
その後、桃山時代と、そして時代は飛んで現代の川が描かれます。
中世の人々は「自然」に特別な意味を与えていた
この絵本は、科学的知識の全くなかった時代に、人々が大自然や自然現象に対して、特別な意味を与えていたことを教えてくれます。
巻末の解説「河原に町ができるまで」に述べられていることですが、「お墓」イコール「お寺」と思い込んでいる現代人には中世までの人々が、河原や中洲や浜に死者を葬ったとは、ちょっとした驚きではないでしょうか。
それ以外にも、人の住む場所と大自然の境である山の根や坂などにも葬ったということです。
教科書では触れない中世の人々のものの考え方も解説
全く科学的知識がなかったら、自然現象をどう考えるのか、現代人には、想像することもむずかしいと思われます。この絵本では、科学的知識がない故のマイナス面とプラス面が巻末の解説にわかり易く述べられています。
歴史の教科書では触れることのない、中世の一般の人々のものの考え方などは、是非は別にして、知る価値のあるものと思われます。
「河原」に集う人々への偏見や差別の発端も述べられる
特に「河原」に集う人々は、武士が台頭する時代から偏見や差別の対象にされたことなども述べられ、それは現代の人間にとっても、無縁とは言えません。この絵本は児童図書ですが、おとなの方がより得るものが大きいかも知れません。
絵は日本画調で歴史絵巻のよう
絵は全体的に日本画調で、歴史絵巻を見ているような印象を受けます。敬遠されがちな「墓」や「死刑」なども描いているため、特に小学生の女の子などには苦手な絵もあると思われます。しかし、「中世」の庶民に対する理解を助けてくれる絵です。
巻末の解説は河原について述べられ、個々の絵に対応する説明は、8〜9割の絵に付けられています。
「文」は網野善彦さん
「文」の網野善彦さんは、1928年(昭和3年)山梨県生まれ。日本中世史の専攻で、この本の第一刷発行当時は、神奈川大学短期大学部教授でした。
「絵」は司修さん
「絵」の司修さんは、1936年(昭和11年)群馬県生まれ。絵の他に、ブックデザインやエッセイなどの分野で活躍されています。
『河原にできた中世の町』のオンライン書店のページ
33×23.1cm
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